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第7話
陽斗の夢を見た。許嫁の彼女と結婚式を挙げている夢。新婦のお腹はふっくりしていて、二人とも幸せそうに笑っていた。
陽斗の隣にいるのは彼女じゃない。本当なら僕だったのに。悔し涙が一筋零れ落ちた。
僕に背を向けた陽斗がどんどん離れていく。いつも側にいたのに。手の届かない場所に行ってしまう。行かないで!追いかけようとしたら何かにつまずいて転んで、はっとして目が覚めた。
「うわぁ――!」
新の顔が目と鼻の距離にあったから驚いて飛び起きた。
「そんなに驚かなくてもいいだろ?うなされていたみたいだから。汗でびっしょりだ」
額の汗をタオルでそっと拭いてくれた。
「着替えを持ってこようか?」
「大丈夫」
一回首を横に振って、
「着替え?」
思わず変な声が出た。
「あれ?汗っかきだからって言ってなかったけ?」
「言ってないよ」
「嘘。じゃあ、誰かと勘違いしたんだ。湊のことは陽斗より知っている自信があったんだけどな」
苦笑いしながら頭を搔く新。会社では口数が少なくてめったなことでは笑わない。それが逆にミステリアスでク―ルでカッコいいって女子社員たちがきゃあきゃあ騒いでいた。こんなにも笑う人だったなんて。意外だ。
「まだ四時だからもう少し寝たら」
横になると布団をかけ直してくれた。
「おやすみ」
「新」
反射的に腕を掴んでいた。
「変なことを言ってなかったよね?」
「変なこと?」
何か口にしながらも止めると、
「別になにも」
笑顔で首を横に振った。
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