8 / 130
第8話
「えぇ~~!本当だ。本当に新がいる~~!」
「そんなに驚かなくてもいいだろう」
「湊、ちょっと新を借りるね」
「俺は父さんに用事はないです」
「俺があるの」
右手を掴むととなりの本棚へ新を連れていってしまった。
唖然としていたら、
「湊じゃないか。奇遇だな、こんなところで会うなんて」
凱さんに声をかけられたから驚いた。
「副社長お疲れ様です」
慌てて頭を下げた。
「湊、絢斗の驚いた声が聞こえたんだが。何かあったのか?」
「絢斗さん、新に用事があるみたいで」
「ん?いま新って言ったのか?陽斗の間違いじゃないくて?」
「ですから、話せば長くなるんですが……」
「凱、大変。明日、雪だよ」
絢斗さんが戻ってきた。
「今は十月だからその心配はないから。それと父さんたち他のお客さんの邪魔になるから、静かに願います」
新も少し遅れて戻ってきた。
「明日まで新の家にいるなら、遊びにおいで。ご飯を一緒に食べよう。こんなチャンス滅多にないから。いいでしょう凱」
「そうだな。実はまだ陽斗には言ってないんだ。湊、遠慮しなくてもいいぞ。湊は息子も同然だから。そうと決まったら買い物をしてから帰ろう」
「凱、湊にちょっとだけ話しがあって。お願い」
両手を合わせる絢斗さん。
「分かったよ。新、一旦外に出よう」
「でも父さん」
「たまには付き合え」
今度は凱さんが新の腕を掴んで連れていった。
「立ち話もなんだからカフェにいこう。そんなに緊張しないでよ。俺まで緊張するから」
困ったようにくすりと笑う絢斗さん。店内に併設されているカフェへとまっすぐ向かった。
ともだちにシェアしよう!

