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第8話

「えぇ~~!本当だ。本当に新がいる~~!」 「そんなに驚かなくてもいいだろう」 「湊、ちょっと新を借りるね」 「俺は父さんに用事はないです」 「俺があるの」 右手を掴むととなりの本棚へ新を連れていってしまった。 唖然としていたら、 「湊じゃないか。奇遇だな、こんなところで会うなんて」 凱さんに声をかけられたから驚いた。 「副社長お疲れ様です」 慌てて頭を下げた。 「湊、絢斗の驚いた声が聞こえたんだが。何かあったのか?」 「絢斗さん、新に用事があるみたいで」 「ん?いま新って言ったのか?陽斗の間違いじゃないくて?」 「ですから、話せば長くなるんですが……」 「凱、大変。明日、雪だよ」 絢斗さんが戻ってきた。 「今は十月だからその心配はないから。それと父さんたち他のお客さんの邪魔になるから、静かに願います」 新も少し遅れて戻ってきた。 「明日まで新の家にいるなら、遊びにおいで。ご飯を一緒に食べよう。こんなチャンス滅多にないから。いいでしょう凱」 「そうだな。実はまだ陽斗には言ってないんだ。湊、遠慮しなくてもいいぞ。湊は息子も同然だから。そうと決まったら買い物をしてから帰ろう」 「凱、湊にちょっとだけ話しがあって。お願い」 両手を合わせる絢斗さん。 「分かったよ。新、一旦外に出よう」 「でも父さん」 「たまには付き合え」 今度は凱さんが新の腕を掴んで連れていった。 「立ち話もなんだからカフェにいこう。そんなに緊張しないでよ。俺まで緊張するから」 困ったようにくすりと笑う絢斗さん。店内に併設されているカフェへとまっすぐ向かった。

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