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第9話

「湊がまさか新と一緒にいるとは思わなかったからすごく嬉しいんだ」 頬杖をついて上機嫌にニコニコと笑う絢斗さん。 「ねぇ、ねぇ、どう?」 「何がですか?」 「だからうちの息子。陽斗よりオススメだよ」 何を言われているのか鈍感な僕にはいまいちよく分からなかった。首をかしげながらアイスカフェオレを飲んでいたら、 「だからうちの息子が恋愛対象にならないかなって聞いているんだけどな」 「へ?」 意味がようやく分かって。むせてゴホ、ゴホと激しく咳き込んだ。 「もしかして変なところに入った?」 絢斗さんがあわてて立ち上がり背中を擦ろうとしたら、 「湊に触らないでいただけますか」 ここにいるはずのない陽斗の声が聞こえてきたから心臓が止まるんじゃないか、そのくらい驚いた。 「どうしてここにいるのが分かったの?」 「どうしてだろうね。着替えを入れておいた。ここに置いておくよ」 ボストンバックを足元に置いてくれた。 「ごめんね携帯繋がらなくて」 「気にしてないよ。電池の減りが早いって言っていただろ?だから充電器も持ってきたよ」 「ありがとう陽斗」 「もうちょっと寄れる?」 「うん、ちょっと待ってて」 お尻を右にずらすと陽斗が肘掛け椅子に腰を下ろしてきた。やっぱり一人用に二人はちょっと狭いかも知れない。 「ねぇ、湊」 髪に指先が遠慮がちに触れてきて、次に頬に手が触れてきた。 「新に迷惑をかけてない?」 「大丈夫」 「本当に?」 瞳を覗き込まれ、 「……だと思う」 伏し目がちに答えた。陽斗に見つめられるとドキドキして、心拍数が一気に跳ね上がる。 陽斗はポーカ―フェイスで表情があまり表に出ないから、何を考えているか分からない。
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