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第11話
「兄さんと新さん、また喧嘩している。喧嘩するほど仲がいいってよくいうけど、兄さんと新さんって、喧嘩もするけど、本当の兄弟みたいに仲がいいよね」
姿を現したのは陽斗の弟たちだった。大学二年の侑大 と、大学一年の悠真 だった。
僕と彼ら以外、全員の表情が一瞬だけ強張ったのが分かった。
「侑大、黙れ」
じろりと侑大を睨み付ける陽斗。こんな怖い顔の陽斗をはじめて見たかもしれない。
「兄さん怖い~~」
ぶるぶると震え上がる侑大。
「悠真、コイツを連れていけ」
「だから言ったろ?兄さんは機嫌が悪いから声を掛けない方がいいって」
悠真が凱さんと絢斗さんに挨拶して軽く会釈をして、侑大を連れていった。二人が行った先には女の子が二人カップを両手に持って待っていた。今付き合っている彼女かな?
侑大も悠真もモデルみたいにすらっと背が高くて、格好いいから女の子にかなりモテるみたいで、会うたび違う女の子を連れている。
「そういえば一ヶ月前にショッピングモールの映画館で二人に会ったとき、あの子達とは違う子達を連れていたな。陽斗、余計なお世話かも知れないが、色恋沙汰で問題が起きる前に二人に忠告しておいたほうがいいんじゃないか?」
「両親が好き勝手やっているから、二人もそれが正しいと思っているんでしょうね。別にいいんじゃないですか。問題が起きて痛い目にあわないと二人には分かりませんよ」
「きみは相変わらずだな」
「湊以外は家族だとは思っていませんし興味も一切ありませんから」
きっぱりと答える陽斗。
「そろそろ俺も仕事に行かないと。失礼します」
軽く頭を下げるとスタスタと歩き出した。すれ違いざま新と一瞬だけどアイコンタクトをとったように見えた。
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