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第13話

誰かに抱き締められている。 寝返りが打てないくらい窮屈なのに不思議と嫌じゃない。安心できる心地のいい温もり。 穏やかな寝顔と安らかな寝息。規則正しくリズムを刻む心音。陽斗にそっくりだから錯覚を起こしそうになった。それで目が覚めた。 まだあたりは薄暗いから夜明け前かな。そんなことを考えながら何気に顔を上げると新の顔が目と鼻の距離にあったから二度驚いて一気に目が覚めた。 あれ?なんで? 寝たときはベットに寝たはず。でも夜中にトイレに行きたくなって。それから……うん、うん唸ったけどどうしても思い出せなかった。 「う~~ん」 新の目蓋が微かに動いた。 この状況をどう説明したらいいんだろう。寝惚けてて寝る場所を間違えたって素直に謝る?そんなことを考えていたら、 「右足の親指痛くないか?」 「親指?」 「そう。昨日の夜、トイレから出たときに親指をぶつけて悶絶していたんだ。やけに静かだと思ったらいつの間にか寝てるし。ベッドに運ぼうとしたんだけど、俺も眠くてここで力尽きた。ごめんな。寒かっただろう?」 肩まで布団をかけ直してくれた。 「もう少し寝よう。ベッドに戻ってもいいし、嫌じゃなかったらこのままここにいてほしいな。湊の体、ぽかぽかしててすごく温かいから不思議と熟睡できるんだ。最近あまり寝れなかったから」 ぎゅっと抱き寄せられた。新も陽斗と同じで胸板が幅広くて厚い。服を着ていても分かるくらいだ。 「さっきも今も陽斗のことを考えていただろ?」 ドキッとした。 「そ、その……似てるから」 「俺と陽斗が?」 こくりと小さく頷いた。
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