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第16話
「凱、湊を口説いたら新に怒られるよ」
「口説いていないだろ?」
「口説いているようにしか見えないよ」
クスクスと笑う絢斗さん。
「俺も昔、凱に同じことを言われたんだ」
「そうなんですか?」
「あれ言ってなかった?」
「はい。初めて聞きました」
頷くと、新がカフェオレを飲みながら、
「父さんはコビヤマで働きながら独学で秘書検定準1級に合格したんだ。でもおじさんはいまだに父さんたちの関係を認めてないからね、絢斗さんがコビヤマにいると会社の風紀、秩序が乱れるとか言って辞めさせたんだ。古参の社員はみな口を揃えて言ってるよ。社長は自分のことは差し置いて優秀な役員秘書を辞めさせたってね。辞めるべきは絢斗さんじゃなかったって」
ぼそぼそと言葉を続けた。
「兄は兄、俺は俺だ。湊、考えておいてくれ」
重苦しい空気を一蹴したのは凱さんだった。
「それはそうと新」
ニヤニヤしながら新の肩に手を回す凱さん。
「どうなんだ?」
「何が?」
「俺に言わせるのか?」
「だから何が?」
「あぁ~~これだからまどろっこしくて見ていられないんだ。父さんは心配なんだよ」
「心配しなくても大丈夫だよ」
凱さんと新、何を話しているんだろう。近くにいるのによく聞き取れない。
「気にしなくていいよ。会社では毎日会っていても話す機会がないからね、たまにしか帰ってこない息子と話せて嬉しいんだよ」
絢斗さんが隣に椅子を持ってきて腰を下ろした。
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表紙、変わりましたね👍️
ファイヤーさん コメントをいただきありがとうございます。 ご縁に恵まれまして、葉月めいこ様に素敵な表紙を描いていただきました。 右のスーツ姿が新です。左が陽斗です。 3人に春が訪れますようにとの願いを込めて春らしく描いていただきました。これからもよろしくお願いします🙇