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第18話
「湊のことが好きなんだ。湊が陽斗のことのことが好きなのが分かっているから、仲のいい友だちでずっといよう、告白なんかしたら湊は俺から離れていく。湊を失いたくないから自分の気持ちに蓋をした。でもたった数日だけど湊と一緒に過ごして欲が出た。もう自分の気持ちに嘘はつきたくない。本当は湊を陽斗のところに帰したくない。ずっと一緒にいたいんだ」
噛み締めるように言うと、新は僕を見つめてくる。彼の瞳の純粋さに、嘘偽りはない。
「陽斗みたく絶対に泣かせたりしない。いつも湊には笑っていて欲しいから。大事にする。だから陽斗じゃなく俺のことを好きになってほしい」
全身に伝わる温もりに、涙がなぜかこみ上げてくる。嫌だって暴れて、突き飛ばせばいいのにそれが出来ない。
「……時間が欲しい」
「そんなにもう待てないよ」
「金曜日帰るまでには決めるから」
「分かった」
そのときピンポーンとチャイムが鳴り、
「新、いるんだろ?」
ノックの音とともに陽斗の声が玄関のドアから聞こえてきたから、ギクッとした。
「一時間も早く来るなんて聞いていない」
新が腕の力を緩め、名残惜しそうに体を離すと玄関に向かった。
足元に散らばった洗濯物を急いで拾い集めた。
「ゴメン、時間を間違えた」
「帰る用意がまだだ」
「用意が出来るまで待つからいいよ」
陽斗が部屋に入ってきた。
「これを片付けてから用意をするからちょっとだけ待ってて欲しい」
「いくらでも待つよ」
普段と何ら変わらない陽斗。笑ってはいるけど、目は笑ってはいなかった。
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