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第19話

「何に怒っているのか知らないが、このまま新のところにいたって俺は全然構わないよ。湊を邪険にせず、実の息子のように可愛がってくれるおじさんたちもいるし。別に湊がいなくても全然寂しくないよ。一人暮らしのほうが気楽だし。湊だって口やかましい俺より、口数の少ない新のほうがいいだろう。新のほうが俺より面倒見がいいし、それに優しいし」 アパートの前に陽斗の愛車のシルバーのセダンが横付けされていた。荷物を移動している間、陽斗はずっと不機嫌だった。手伝おうか?と言ってくれた新にその必要はないときっぱりと断り、玄関のドアをバタンと荒っぽく閉めた。 「こんな俺とは一緒に乗りたくないだろ?」 「怒ってないよ。会社でいろいろあって、それで……だからごめんなさい」 後部座席のドアを開けようとした陽斗の手を咄嗟に掴んだ。 「これからは新じゃなくて、まず先に俺に相談すること。いいね?分かった?」 「分かった」 「本当に分かってる?」 顔を覗き込まれてドキドキして心拍数が一気に跳ね上がった。頷くだけで精いっぱいだった。 「分かっているならいい。俺も言いすぎた。家に帰ろう」 陽斗がニコッとようやく笑ってくれた。ずっと不機嫌で、ずっと仏頂面で全然笑ってくれなかったから。良かった、いつもの陽斗に戻ってくれて。 マンションの地下駐車場の指定の場所に車を停めたあと、 「さっきから足を気にしているようだけど」 陽斗にそう言われドキッとした。 陽斗は見ていないようでちゃんと見ている。 「僕おっちょこちょいだから、夜中にトイレに行ったときにつまずいて足の指をぶつけて、陽斗が迎えに来てくれたときもねつまずいて、同じことろをぶつけたの。本当にドジだよね。新から湿布をもらって貼ったら大丈夫。もう痛くないから」
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