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第20話

新に湿布を貼ってもらったなんか言ったらまたへそを曲げられる。だから新の名前を出さなかった。 「荷物はあとで俺が運んでおく。車のキ―を頼む」 鍵を渡された。 「足が痛いんだろ?無理しない方がいい」 助手席のドアを開けると、陽斗が後ろ向きで腰をおろした。 「ほら、おんぶしてやるから」 「大丈夫だってば。歩けるから」 「またつまずいて転んだりしたら大変だろう。湊は相変わらず変なところが強情なんだから。こういうときは素直に甘えろ」 「本当に大丈夫だから」 首を横に振った。車をおりようとしたら体がふわりと宙に浮いたから驚いた。 「は、陽斗!」 びっくり過ぎてすっとんきょうな声がでた。 「甘えない湊が悪いんだぞ。車の鍵を閉めて」 まさかお姫様抱っこをされるとは思わなかったなら、油断して完全に不意打ちをくらった。 住人誰ともとも会いませんように。。祈るような思い出で祈りながらエレベーターに乗り込んだ。 「俺が悪いんだ。一時間も早く湊を迎えに行ったから。だから驚いて転びそうになったんだろ?湊の様子が変だったのも、新が気まずそうにしていたのも納得がいく。タイミングが悪かったな。ごめんな」 「ううん、大丈夫。気にしてないから」 さすがにこんな状況で違うとは言えなかった。まして新に好きだって告白されたなんて口が裂けても言えない。
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