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第22話

ジャージャーという炒め物の音や漂ってくる出汁の美味しそうな匂いに目が覚めた。 「そろそろ起こそうと思っていたんだ。ご飯を食べたら?お弁当を作っておいたよ」 テ―ブルの上に黒いランチバックが二つ置いてあった。 「一つは新の分。湊が世話になったからね、そのお礼。電話をしようとしたら新から電話があって、湊にUSBメモリを渡すのを忘れたって言ってたよ」 「あぁ~そうだ。すっかり忘れていた」 ガックリと肩を落とすと、 「そう落ち込むな。飲むよね?」 陽斗からカフェオレが入ったマグカップを渡された。 「ありがとう陽斗。あのね三日前、僕が帰って来た時に陽斗が電話で話しをしているようだったから……気になって」 「三日前?父さんからじゃないかな。ごめん、よく覚えていない。洗濯物を干してくるから先に食べてていいよ」 陽斗がにこりと微笑むと洗面所に向かった。軽くはぐらかされてしまった。 昨日の今日だもの。毎日のように会っているはずなのに。今日は会うのが照れくさくて。告白されて、今まで見ていた景色がこんなにも変わるなんて、思いもしなかった。 新にお弁当を渡して、USBメモリをもらわないと、部長にまた怒られる。気が重かったけど、勇気を出して新がいる営業部に向かった。 「あら、湊じゃないの。久し振りね」 サステナビリティ推進部の川瀬次長がなぜかいた。竹を割ったような性格で人望も厚く、男性社員に負けじとエリートコ―スを突き進んでいる。 「彼氏に会いに来たの?」 「だから彼氏じゃないです」 「ふぅ~~ん、そうなんだ」 川瀬次長の目がお弁当に向けられているのに気付き慌ててうしろに隠した。
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