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第23話
「それもしかして愛妻弁当?」
違いますと否定したら、
「いいなぁ~~今度私にも作ってよ。ねぇ、お願い湊」
川瀬次長にそう言われどう答えていいか戸惑っていたら、
「川瀬次長、独身を謳歌するのはそろそろ卒業して、お弁当を作ってくれる素敵な男性を見つけらどうですか?」
新が話しに割り込んできた。
「なにも湊が私の夫になってくれれば何の問題もないのよ。妹は陽斗と結婚して、姉は湊と結婚する。ナイスアイデアだと思わない?」
「年が離れすぎてます」
「離れすぎてるって言うけど、一桁よ、ギリで」
「四捨五入したら十歳です」
川瀬次長は半導体の先進国であるアメリカの企業に海外視察にニヶ月近く行っていてずっと不在で、昨日帰国したばかりだった。
川瀬次長には妹が二人いて、末の妹のすずかさんが僕と同い年で、陽斗の許嫁だ。
「私のことは気にしなくていいから、新に用事があったんでしょ?」
「はい。新、これ」
お弁当袋を渡した。
「あと、あの……」
「アレね。葉山部長も椿原さんもまだ出社していなくて、隣のデスクの同期の土居さんに椿原さんが出社したら渡してくれと頼んでおいたよ。お弁当ありがとう」
川瀬次長がいるからかもしれないけど、新はいつも通りの新だった。僕だけが恥ずかしくてまともに目も合わせられなかった。
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