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第25話

「ちょっと桜井さん!」 椿原さんがカンカンになってやって来た。 「これはどういうことよ!嫌がらせのつもり?」 書類の束を突き付けられた。 「根も葉もないことをでっちあげて。あなたのせいで私がどれだけ恥をかいたと思うのよ。黙っていないでなんとか言ったらどうなの?副社長の愛人だからといっていい気にならないでよね」 「僕はこんなの知りません。それに僕は副社長の愛人ではありません」 僕が確認した内容とは全然違っていた。中身がまるっきり入れ替わっていた。 「湊が副社長の愛人!?なかなか面白いことをいう子ね」 川瀬次長がテーブルに頬杖をついてくすっと笑った。 「あなた誰よ。部外者は黙ってて」 「さっきの会議の時に自己紹介したわよ。初めまして新入社員の椿原さん。私はサステナビリティ推進部、次長の川瀬かほりです。宜しくお願いしますって。でも聞いてないわよね、退屈そうに欠伸しながらスマホを見てたものね」 「俺は川瀬さんが自己紹介するのをちゃんと聞いていた」 真顔の新がぼそりと呟いた。 「それに根も葉もないことをでっちあげてなんかいませんよ。湊に仕事を押し付けて葉山部長と遊んでいたことは事実でしょう。現に今日だって葉山部長と仲良く遅刻してきて会議にも五分遅れた」 淡々と言葉を続ける新。凱さんには絢斗さんがいる。親を侮辱され腸が煮え繰り返るくらい憤っていた。
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