32 / 130
第32話
廊下ではちょっとした騒ぎになっていた。その中に椿原さんの姿もあった。
「桜井さんと一緒にいる人、そんなに有名な人なの?」
「えぇ~~!彼を知らないの?」
「うん、知らない。誰なの?」
「名前は七海陽斗さん。年は二十五歳。社長の長男で、住宅街にあるお洒落な雰囲気でデートや女子会にオススメの洋食カフェレストラン・ル―ナ・ノアのオ―ナ―シェフだよ。後継者がいなくて一度は閉店したんだけど、前のオ―ナ―の愛弟子だった彼があと継いで今年の六月に再オ―プンさせたの。タウン誌で度々紹介されて今や大人気店なのよ。携帯で検索してみたら?」
女子社員に言われ、椿原さんがすぐに携帯で調べはじめた。
「一緒に写っているこの人は?どこかで見たことがあるんだけど」
「川瀬次長の妹さんじゃないかな?婚約者みたいよ」
「もしかして陽斗さんより年上?デブで不細工な女と結婚させられる陽斗さんがなんだかかわいそう。私のほうが何倍も可愛いのに」
ほくそ笑みを浮かべる椿原さん。
「ゴメンね、それ私なんだって言っても聞こえてないか。仕事のストレスがたまりにたまって、夜寝れなくて、不規則な食生活を送っていたからね。あっという間に10キロも太ってしまって。陽斗のお陰で一年くらいで前の体重に戻ったのよね。感謝してる」
「湊に頼まれたからアドバスをしただけですよ。感謝されるようなことななにもしていません」
陽斗が椿原さんに鋭い視線を向けた。
ともだちにシェアしよう!

