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第40話
良かった。笑ってくれて。ずっと不機嫌で、仏頂面した陽斗の顔しか見ていなかったから。笑った顔を見れたからホッとした。
「湊に話したいことがあるんだ」
すずかさんのことかな?川瀬さんから何度か電話が来ていたみたいだし。
「上がってからでもいい?逆上せそうだから」
「駄目。すぐ終わるから聞いて」
浴槽の湯が大きく揺れて。気付いたときには陽斗の逞しい腕の中にすっぽりと抱き締められていた。何が起きたかすぐには理解することが出来なくて。頭のなかが真っ白になった。
「許嫁だった人との結婚は白紙になった。俺には湊がいる。湊と一生を添い遂げる覚悟を決めている。最初から俺は父にそう言っていた。なのに勝手に結婚話を進めたんだ」
はじめて聞くことばかりで驚いて声も出なかった。
「あれ?おかしいな。湊は俺のことが好きなんだよね?俺以外の男のほうが良くなった?新に好きだって言われたんだろ?」
「なんでそのことを」
湊の顔にそう書いてあった
「嘘」
「何年一緒にいると思っているんだよ」
陽斗の顔がグイグイと近づいてきて。思わず目を閉じたら、苦笑しておでこに軽くキスをされた。
体が熱い。頭がくらくらしてきて、ぼぉ―っとしてきた。
「本当に湊が逆上せそうだ。上がろう」
気付いたときにはタオルで体をぐるぐる巻きにされ陽斗に横に抱っこされたままベットへ運ばれていた。
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