41 / 130
第41話
「……湊、起きて」
耳元で甘く優しい声がする。
「ん……」薄く目を開けると、
「おはよう、湊」
おでこに軽くキスをされた。
ぼんやりしたまま、あれ、なんで陽斗にキスをされてるの?なんで一緒にいるの?と首を傾げる僕に、少しずつ現実が押し寄せてきた。
「そろそろ起きる時間だよ」
右肘をついて僕を見下ろしている陽斗の上半身は裸だった。
あ、そうだった。お風呂に一緒に入って逆上せてしまって。昨夜のあれやこれや恥ずかしいことが頭の中に一気によみがえり慌てて飛び上がった。直接ひんやりとした空気が触れて、慌てて掛け布団を体に手繰り寄せた。夢じゃなかったんだ。
「お互い裸は見慣れているんだし、今更隠しても意味がないよ」
陽斗にくすりと笑われた。
「湊のことだ。許嫁がいる俺を好きになってはいけないのに。きみが報われない恋に苦しむのが目に見えていたから、本当は湊の気持ちに気付いていたけど、あえて気付かないフリをしていた。ごめんな、しんどい思いをさせて。これからは湊のことを大事にする。だから、新に付き合えないってはっきり断って欲しいんだ」
手を絡めると、ぎゅっと握られた。色気ただ漏れの陽斗にじっと見つめれ、顔が火照ったように真っ赤になった。
「じゃあ行ってくるね」
「湊待って」
陽斗が追い掛けて来た。
「お弁当を忘れているよ」
今日も陽斗は僕と新の分をふたつ作ってくれた。
「ありがとう」
「行ってらっしゃい」
陽斗の顔がぐいぐいと近付いてきて。肩に手を置くと頬に軽くキスをされた。
「これがずっとしたかったんだ」
陽斗はすこぶる機嫌が良かった。
ともだちにシェアしよう!

