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第44話

「桜井さん、お兄さんが迎えに来てますよ。いいなぁ、イケメンで過保護なお兄さんが二人もいて。羨ましいです」 「そんなんじゃありません」 顔を真っ赤にして否定したら、相沢さんたちにクスクスと笑われてしまった。 「新ごめんね。待ったよね?」 「いや、俺もいま終わってきたところだから。帰ろうか」 「うん」 会社からカフェまで十分とかからない。新と並んで歩いていたら、 「すずかさんとの婚約が白紙になって、やっと陽斗と両想いになれたから、新とは付き合えない。ごめん。諦めて。新とは付き合えないけど友だちとしてこれからも仲良くしてほしい……だろ?湊が俺に言いたかったのは」 唐突にそう言われ、ギクッとして足を思わず止めた。 「何年一緒にいるんだよ。湊の顔を見れば何が言いたいかすぐ分かるよ。ごめんな湊。今回ばかりは譲れない。陽斗からメールをもらったとき、絵文字なんて今までほとんど使ったことがないのに珍しく使っていたからそれでぴんときた。いつもと様子が違う湊を見てこれは間違いないと確信した」 不愉快そうにむっとする新。 「湊には怒っていないよ。湊にそれを言わせようとした陽斗に怒っているだけだから。気にしないでいいよ」 新に腕を掴まれ、足早にカフェの前を素通りした。 「新どこにいくの?」 「どこって、俺ん家。すぐそこだし」
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