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第45話
「散らかっているけど適当に座って」
新にはそう言われたけど綺麗に片付けられていた。
何の気なしにベットに座ったら、
「俺に好きだって告白されたのにベットに座るんだね。湊ってそういうところが天然だね」
新に笑われてしまった。
「そういう訳じゃなくて、本とか洗濯物とか置いてあるから座るわけにはいかないかなと思って」
「何もどかせばいいだろ?」
新が紙袋を持ってきて足元に置いた。
「俺よりも過保護な父さんたちから。湊にプレゼントだって」
「凱さんと絢斗さんから?」
なかをそっと覗くと、暖かそうなボア付きのアウターが入っていた。
「湊ってかなりの寒がりだろ?冬になると何枚も服を着込んでまんまるに着膨れて。それがまた、可愛いんだけどね。会社で湊が息子だってことを隠す必要がなくなったから父さん嬉しくて仕方がないみたいだよ。湊は気付いていないけど、父さんは湊のことが心配で遠くからずっと見守っていたんだよ。だから葉山部長と椿原さんのことも知っていた」
「嘘……ぜんぜん気付かなかった」
「湊、驚きすぎ」
新が愉しそうに笑った。
「カフェオレ飲むよね。ちょっと待ってて」
新が台所に向かった。何気に本を見ると何か挟んであった。妙に気になって手を伸ばしてそれが何か確認すると写真だった。
懐かしい。高校の入学式のだ。凱さんが住んでいるアパートの前で新と陽斗と三人で撮影したものだ。県立高校の、何ら代わり映えしない学ラン姿の僕と新。陽斗は私立の高校だったから一人だけブレザー姿だった。
誰が真ん中になるかはじゃんけんをしなくても自然と決まった。同い年の新と陽斗。二人に挟まれて、横を見れば僕の視線はちょうどそれぞれの肩の下のあたり。それはいまも変わらない。
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