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第47話
「あ、そうだ。お土産にもらったチーズタルトがあるんだった。湊は甘いものが好きだったよね?ちょっと待ってて」
新がまた台所へ向かった。ちょうどその時携帯が鳴った。マグカップをテーブルの上に置いてチラッと画面を見ると陽斗からのショートメッセージだった。【今どこ?会社?】すぐに返信をしなかったら【迎えに行く。会社の近くのカフェでいい?】二通目が送信されてきた。どうしよう。怒られるのを覚悟の上で新の家にいるって正直に言う?それともまだ仕事が終わらないって嘘をつく?嘘をついてもすぐにばれてしまうから意味がないんだけど。うんうん悩んでいたら、すっと手の中から携帯が引き抜かれた。
「陽斗はいいじゃん。なにもしなくても湊が自分のところに帰ってくるから。俺なんかいつも一人だし」
そう言いながら携帯を操作して電源をオフにして乱暴にベットの下に投げつけた。
「新どうしたの?顔が怖いよ」
いつもとは明らかに様子がおかしい新。
怖くて逃げようとしたけど、押し倒され、有無いわさず新がのし掛かってきた。押し返そうともがいたけど、体格が違えばウエイトにもかなりの差がある。しかも上にのしかかっている新のほうが断然有利だ。
「じゃま」
新は僕の手首を乱暴に握り締めて、頭の上で万歳の形にさせられた。
「陽斗とはしたのか?」
「してないよ。なにも。お風呂に一緒に入っただけで……」
「本当に?」
掴まれたままの両腕にぎりぎりと力が込められていく。
「僕が新に嘘をついたことがある?い、いた……」
痛いと叫べば新はやりすぎたと我に返ってこの手を離してくれる。
そう思っていたけど、見慣れた顔がどんどん近付いてきて。避ける間もなく唇を覆われて、僕は目を見開いた。
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