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第48話

一度触れた唇はすぐに離れたけど、再び二度、三度と触れてきて。下唇を甘く噛まれ、その下唇を、新の双唇が挟み込んで緩く吸い付かれた。 なんでなのかよく分からないけど、不思議と嫌じゃなかった。 「……ごめん湊」 やがて唇が離れて、どうすればいいか分からず固まっていると、新も戸惑ったような顔を見せた。 ぎこちなく見つめ合ったのち、先に動いたのは新だった。 「陽斗が来る時間だ」 ぽそりと呟くと、手を解いてくれてた。 「陽斗がなんで?」 「湊にまだ話していなかったことがあるんだ。湊の頬、真っ赤だ。キスだけでこんなになっちゃって可愛い」 新の大きな手が頬を包むように触れてきた。ひんやりと冷たくて、気持ちいい。 「湊、陽斗じゃなく俺を選んでよ」 悲しげな眼差しで見つめられ、切ない気持ちで胸がいっぱいになった。しんと静まり返った部屋に ピンポンとチャイムが鳴ったのはそれから数分後のことだった。 「昼前に店のすぐ目の前で火事があって、周辺の道路が通行止めになったから、予約が何件かキャンセルになったんだ。温めたらすぐに食べられるから一緒に食べようと思って」 両手にぶら下げたレジ袋を掲げた。まともに陽斗の顔を見れないでいたら、 「湊はなにも悪くない。悪いのは俺たちだし。ごめんな、好きになって」 まさか陽斗のほうから謝られるとは思ってもいなかったから驚いた。
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