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第49話
「これ美味しい。レシピあとで教えて」
「分かった。メールする」
大の大人が二人並んで作業するには少々手狭な台所に仲良く立つ新と陽斗。険悪なムードだったのはほんの一瞬だった。喧嘩するほど仲がいい、その言葉通り本当は仲がいいのも知れない。でもなんで仲が悪そうにしているんだろ?隠す必要なんてないのに。
「湊、ベットの下が収納スペースになってて、そこに折り畳み式のテ―ブルがあるんだ。出してくれない?」
「分かった」
新に言われて引き出しを引っ張った。
「あ、そうだ」
新が慌てて飛んで来た。
「どうしたの?」
「なんでもない」
テ―ブルだけ取り出すと急いでぱたんと閉めた。
「さてはエロビデオとかエロ本とか隠し持ってるとか?それとも……」
「それ以上は禁句。それにその言い方古い。陽斗と一緒にしないでくれ。引っ越しを手伝ったお前なら分かるだろう」
「あぁ~~あれか」
「そうだよ」
恥ずかしいのかわざとぶっきらぼうな言い方をする新。
「話しが見えないんだけど……」
「あとで新にじっくり聞くといいよ」
陽斗がくすくすと愉しげに笑い出した。
手際よくテーブルの上にハヤシライスオムレツとスパゲティーグラタンとサラダなど色とりどりのおかず並べる陽斗。新も温めたスープを運んできてくれた。
「湊のはそんなには温めなかったけど熱いかもしれないからよく冷ましてから飲んだほうがいいかも。火傷をしたら大変だから」
「二人ともありがとう。陽斗と新と三人でご飯を食べるの久し振りだからすごく嬉しい」
「久し振りだっけ?そうでもないと思うけど……」
「三ケ月振りだよ」
新が真顔でぼそっと答えた。
「マジか。よく覚えてるな」
新の記憶力に舌を巻く陽斗。
和やかな雰囲気で食卓を囲んでいたら、
「湊」
新が箸を置き、しっかりとした鋭い眼差しを向けられた。
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