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第50話
「話せば長くなるから食べながらでいいから聞いてほしい。湊は俺と陽斗の誕生日を知ってるよね?」
「新は四月八日生まれで、陽斗は三月二十五日生まれだよね」
「そう。だから学年は一緒。実は俺と陽斗は実の兄弟なんだ」
「え?」
驚いて声が思わず裏返った。
「俺の父と母は親同士が決めた許嫁で、父は結婚するまで新の母親と交際していたんだ。妊娠が分かったときは中絶出来る時期が過ぎていて、父は渋々ながら出生前に認知してかなりの額の慰謝料を払った」
「そして俺が生まれた。俺の母は絢斗さんの姉だ。母は生後まもない俺を実家に置き去りにして慰謝料を持って姿を消した。当時二十歳だった絢斗さんが施設に入れずに自分が育てると言ってくれて、それで凱さんが絢斗さんと俺、まとめて面倒をみるから黙って嫁にこい。そうプロポーズしたんだ。凱さんは吉人さんの弟とは思えないくらい愛妻家で、見ているこっちが恥ずかしくなるくらい朝っぱらからイチャイチャしている。俺も湊と両想いになれたら何年たっても父さんたちみたいに仲良く一緒にいたい」
「新が生まれた日に、父と母は結婚式を挙げた。そして俺が生まれた。でもどっちにも全然似てなくてね、不義の子じゃないかって父は母を疑いの目でみるようになった。自分だって同じことをしたのに。母は父を裏切ることはなにもしていないのに」
陽斗が怒りに震えながら唇を噛み締めた。
昔陽斗が言っていたことをふと思い出した。陽斗のお母さんのひいおばあちゃんが欧米から嫁いできた人だから隔世遺伝じゃないかって。だから似ていない、そう感じたのかもしれないって。
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