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第66話

「杏南さんって専業主婦だよな?」 「そうだよ。社長夫人としてのプライドが高い人だからね、他人に指図されるのが嫌、汗水流して働くのも嫌、ずっと働いていないよ。どうして?」 「杏南さんのSMSを偶然見付けたんだ。三か月に一回は国内か海外へ旅行をしている。かなり贅沢して派手に遊んでいるみたいだけど、どこからその金が出てくるのかなってふと思ったんだ」 「支払いは吉人さん名義のクレジットカードだろう。だから金銭感覚がマヒしているんだよ。返済額が雪だるま式に増えてとんでもないことになっているかも知れない。吉人さんに愛想をつかれて家を追い出されても自分は悪くないとこれっぽっちも思わないんだろうな」 陽斗がやれやれとため息をついた。 会社のすぐ近くにあるコンビニエンスストアの駐車場に車を停める陽斗。 「俺が杏南さんの電話を無視したら間違いなく湊のところに電話を掛けるようになるだろ?湊の性格上俺や新に迷惑を掛けたくないと絶対に話さないだろ?精神的に追い詰められて、どうしようもなくなって、それでやっと俺らに話してくれる。それでは遅いんだよ。絢斗さんみたくなって欲しくないから」 「陽斗それどういうこと?初めて聞いたんだけど」 寝耳に水だったのか新が驚いたような声をあげた。

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