69 / 130
第69話
「自分の子どもと孫が同じ学年になるなんて洒落にならないと思わないか?」
「どうせまた手切れ金を渡してあっさりと捨てるんだろうけど、杏南さんあぁ見えて一筋縄にはいかないからね、やたらとプライドだけは高いからね」
「捨てられた者同士、高みの見物といこうか」
「それいいね」
あくまで他人のフリをしようとする吉人さんに陽斗も新も怒りを通り越して呆れていた。こんな人が父親なんだ。侑大と悠真が不憫に思えてならなかったみたいだった。二人の性格があそこまでひねくれたのも、女性関係が派手なのも親からの愛情不足で育ってきたせいなのかも知れない。
「そう意味では俺らは幸せだ。湊と凱さんと絢斗さんから愛情をたっぷりもらってきたから」
「それにじいちゃんとばあちゃんにも可愛がってもらったし。何より湊と新が隣にいてくれるから」
「湊と凱さんと絢斗さんを幸せにしないとバチが当たる」
「俺はあの人みたくはならない」
「心配しなくても陽斗は絶対にならないよ」
新が陽斗を励ました。ついさっきまで震えていた手をぎゅっと握ると、ありがとうの言葉が返ってきた。
まさかそんなことにはなっているとはこれっぽっも思わなくて。携帯を片手で弄っていたら、
「あ、あの人だ……」
吉人さんと一緒にいた女性のことを思い出した。
ともだちにシェアしよう!

