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第70話
「何を思い出したって?」
「お帰り。なかなか帰ってこないからすごく心配したよ」
「ごめんな」
二人がすっきりとした表情で帰ってきた。あれこれと心配したけど取り越し苦労に過ぎなかった。
「先月の上旬にあの女性が道で急に倒れて、赤ちゃんいますってピンクのストラップが目にはいったからすぐに救急車を呼んだんだ」
「そんなことがあったんだ」
「俺、初めて聞いたけど」
陽斗が怪訝そうに口した。
「ごめん陽斗。たいしたことじゃないし別にいいかなって思って」
「それで?」
「名前を言わずに会社に戻ったんだけど、あとで会社にその人のご主人が訪ねて来て、なんで分かったのか聞いたらSMSで妻の命の恩人を探していますってポストをしたらあっという間に拡散されて、情報が集まって、すぐに誰だか分かったって。それを聞いて怖くなった。だってすぐに個人を特定することが出来るんだもの。新もごめんね、言わなくて。ちょうど外回りに行っていなかったからあとで言わないととは思っていたんだけど忘れちゃって」
「今度からは忘れる前にちゃんと教えてね」
「便利な世の中になったけど、その分危険も孕んでいる。へぇ~~あの人も既婚者なんだ」
意味深なことを言う陽斗。そうこうしているうちに吉人さんたちがレジ袋をぶら下げてコンビニエンスストアから出てきた。向かう先は隣のホテルだ。
「湊、俺たちも会社に行こう。陽斗送ってくれてありがとう」
信号が青に変わり新と一緒に横断歩道を渡りはじめたら、
「ちょっと!」
あの女性が目をつり上げてあとを追い掛けてきた。
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