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第75話
「ごめんね、驚かすつもりはなかったのよ」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃないんでしょう?携帯を貸して。休憩時間中に何回か掛けたんだけど着信拒否にしているのか全然繋がらないの。だからちょうど良かった」
「杏南さん覚えていないと思います」
「新にも言われたわ。反論もせず黙っていたらつけあがるだけでしょう。一言だけ言ったら切るから」
右手を差し出され、
「分かりました」
悩んだ末に携帯を渡した。
「なんかさ、この携帯……」
ホーム画面を一目見るなり何かに気付く川瀬さん。ぼそりと呟いた。
「ねぇ、湊。これ、乗っ取られているかも。動作が遅いのは気のせいかと思ったんだけど気のせいじゃないわ。それに充電の減りが早すぎない?見るからに怪しいメールが送信されて来ているし」
予想外のことを言われ驚いて声も出せなかった。
「このアプリインストールした記憶ある?」
川瀬さんに言われ画面を見ると初めて見るアイコンが画面上にあった。
「これ、仮想通貨のゲームアプリよ。詐偽サイトじゃないかって噂の。陽斗は筋金入りの束縛男だもの。湊の携帯の位置情報を常に監視して、マメにチェックしているであろうあの陽斗が気付かない?そんなことある?ないよね。しかもほら、ついさっきまでオンだった位置情報が勝手にオフになっているし。ということは……」
あたりを見回す川瀬さん。
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