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第78話

「知ってるよ、そんなの。桜井って副社長の息子なんだって?何不自由なくのうのうと生きてきて、人生勝ち組?あぁ~~虫酸が走る。俺のことバカにしているよね?いつも悪口を言ってるよね?」 「言ってません。考えもしません」 部署が違うから平沢さんとは挨拶を交わす程度でそれ以上の付き合いはない。 「嘘つきは泥棒の始まりだよ」 「嘘なんてついてません。誰がそんなこと」 「誰だっていいじゃん。それよりも俺と遊ぼうよ。桜井って男が好きなんだろ?ちょうど暇してたんだ。男なら誰でもいいんだろ?」 ニタニタと笑う平沢さん。お酒の匂いがぷんぷんした。恐怖を感じて立ち上がろうとしたけど、腰が抜けてしまったかすぐには起き上がることができなかった。這ってでもなんとか逃げようとしたけど、 「なんで逃げるの?」 平沢さんに呆気なく捕まってしまった。 「こうして見ると桜井って可愛い顔をしているんだね」 携帯のライトを顔にあてられて眩しくて目を細めた。 その時ぱっとフロアーの明りが一斉に点いて、何をしているんですか!と言いながら守衛さんが走ってきた。 「クソ」平沢さんは舌打ちをしたのち、 「あとで覚えておけ!」 捨て台詞を吐くと僕の手を離して反対方向へ走って行った。 「湊」 新が息を切らしながらすぐに駆け付けてくれた。

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