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第82話
僕たちの帰りを凱さんと絢斗さんが待っていてくれた。
「怖かったよね」
車から降りるなり絢斗さんにぎゅっと抱き締められた。
「警備室から連絡をもらったときは心臓が止まるかと思ったぞ。良かった、無事で」
凱さんがほっとして胸を撫で下ろした。
「どこが無事なんですか。最初から俺は反対だった。凱さんが任せろ、心配するなと言うから渋々コビヤマへの入社を認めたんですよ。俺の稼ぎがあれば働く必要なんてない。一生家に閉じ込めておいて誰の目にも触れさせたくなかったのに。俺だけを見ていてくれればそれだけで幸せだったのに。湊の泣く顔なんて見たくなかったのに」
凱さんに食って掛かる陽斗。
「そんなのどうでもよくない?湊を休ませるのがまず先じゃない?」
めったなことでは怒らない絢斗さん。苛立った声にしんと静まり返った。
尻餅をついたとき手首を捻ったみたいで念のため病院で診察を受けてきた。警察からも事情を聞かれて、帰るのが遅くなってしまった。
「前から聞こうと思っていたんだけど、そこまで湊に固執しているのになんで新は良かったの?」
「俺もよく分かりません。兄弟だから……かな」
強張っていた陽斗の表情が少しだけ緩んだ。
「陽斗がそんなことを考えていたなんて驚いた」
「実は俺も同じことを考えていたんだ。やっぱり兄弟。血は争えないね」
呆気にとられる僕を見て新がくすくすと笑い出した。
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