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第86話

「絢斗さんの仕事って確か……」 「浮気調査はタツミに任せろのコマ―シャルをバンバン流している辰已探偵事務所のただの事務員だよ」 「新から何か相談されませんでしたか?」 「されたよ。でも秘密」 し―っと人差し指を唇に立てる絢斗さん。 「あ、でも、陽斗さんからはないよ。それは本当だよ」 「絢斗さんは嘘をつかないから信じます」 「ありがとう湊。お昼だからお粥を温めてくるね。どう食べれそう?」 「はい」頷くと、 「ちょっと待っててね」 絢斗さんがにっこりと微笑んで台所へ向かった。でも何故かすぐに戻ってきた。 「携帯を借りるね。こういう場合義弟にガツンと言ってもらったほうが効果覿面だろうから」 絢斗さんがルンルン気分で戻っていった。 僕の携帯に掛けてきた杏南さんの電話をスピーカーにして、絢斗さんは自分の携帯にくっつけた。俺の息子たちと陽斗に直接電話を掛けるな。迷惑だ。これからは俺に掛けて寄越せ!分かったな。凱さんに怒られて一瞬で酔いがさめたのか私は悪くないと短く答えると電話を一方的に切る杏南さん。 ―湊の具合はどうだ?熱はまだ下がらないのか?なにか買っていこうか?― 「心配をしなくても大丈夫だよ。差し入れ禁止だから。なにも買ってこなくていいよ」 すっかり忘れていたけど、ここにもいた。過保護な人が。絢斗さんが ぷぷっと笑った。

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