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第88話

「あれ?昨日はなかったよな」 凱さんが何かに気付いてテレビに向かった。 「陽斗、見てないでちゃんと仕事をしろよ」 凱さんはみまもりカメラの存在に気付いて笑顔で手を振った。 「あのね凱さん、こういう場合は気付いても普通は無視するものなんだよ」 「だって煽るのすごく楽しくないか?」 「ぜんぜん楽しくないから。いい凱さん、誰かさんみたく暴走して、とばっちりを受けるの湊なんだよ。それ分かる?」 「誰って俺しかいないだろう。やっぱり血は争えないな」 クスクスと愉しそうに笑う凱さん。 「ダメだ、こりゃあ」 絢斗さんがやれやれとため息をつきながら額に手を置いた。 あの、凱さん。みまもりカメラから陽斗の声が聞こえてきた。 「差し入れ禁止なのに何を持ってきたんだってだろ?これは俺の持論だが熱があって食欲がないときは、好きなものや食べたいものを食べれたらいいんだ。そうすればすぐに熱が下がる。なぁ、陽斗覚えているか?湊が中学生のとき熱を出して丸二日何も食べれなかったときがあっただろ?バニラのアイスが食べたいって深夜の二時に急に言われてコンビニエンスストアまで走ったことがあるんだ。それを思い出したからバニラのアイスなら食べれるかなと思って買ってきたんだ。あぁ~そうだ。絢斗、冷凍庫に入れないとアイスが溶ける。すっかり忘れていた」 凱さんって本当に面白い。 「最近ね、物忘れがひどいんだよ。ちゃんと冷凍庫に入れたから大丈夫だよ」 絢斗さんも苦笑いを浮かべるしかなかった。

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