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第89話
陽斗から遅くなると連絡が入り、新からも遅くなると連絡があり、絢斗さんがこのままお泊まりしようかなと冗談交じりで話しをしていたら、息を切らして新が帰ってきた。
「新お帰り。早かったね」
「営業先から直帰していいと連絡をもらって急いで帰ってきたんだ。父さん今日一日ありがとう」
「至福のひとときを過ごさせてもらってお礼を言わないといけないのは俺のほうだよ。湊ね、寝顔がめっちゃ可愛いかったんだよ。いっぱい写真を撮っちゃった」
「それは良かったね」
「うん、良かった」
「父さん、まずは落ち着こうか。それと悪気はなかったんだ。ごめんね」
みまもりカメラをちらっと見る新。
「昨日の今日だし、それに携帯を乗っ取られて自宅が特定されているんだよ。誰が来るか分からないし用心に越したことはないよ」
「そう言ってもらって良かった」
新がほっとしたように大きくため息をついた。
「父さん泊まっていく?」
「冗談でも嬉しい。でもお邪魔でしょ?凱さんが待っているから大人しく帰る」
新と絢斗さんがそんな会話を交わしていたら、ただいまと陽斗が帰ってきた。
「ごめんなさい。まだ帰らずにいました。じゃあ新またね。湊早く良くなるといいね」
絢斗さんが急いで帰り支度をはじめようとしたら、
「なにも御飯を食べていったらいいのに」
陽斗がボソリと呟いた。
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