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第93話

夜中にぽっかりと目が覚めた。 「陽斗だ。お帰り。なかなか帰ってこないから心配したんだよ」 「ごめんな、起こして。ほろ酔い気分の凱さんに捕まっていたんだ」 陽斗の手が額にそっと押し当てられた。 ひんやりとした手が冷たくて心地いい。 「まだ熱があるね。今日も休んだほうがいいかも知れない」 「うん、そうする」 陽斗の言うことはいつも正しい。 「陽斗遅いぞ」 背中にぴったりとくっついて寝ていた新がモゾモゾと動いた。 「ごめんな。でも二人きりになれて嬉しいんじゃないか?」 「喧嘩する相手がいないから張り合いがない」 「そうか」 不貞腐れたような言い方にくすくすと笑う陽斗。 「何があっても這ってでも湊と新のところに帰るよ。二人がいる場所が俺の居場所だもの。待ってくれている人がいる、これほど心強いものはない」 「良かった」 ボソリと新が呟いた。 「湊しか見ていない陽斗が俺も混ぜてくれたからさ」 「当たり前だろ?俺がいないと張り合いがないんだろ?新兄さん」 「その呼び方止めてくれ。背中がむず痒くなるんだ」 ぶるっと背を震わせる新。照れてる新もなかなか可愛いかも知れない。なんて思っていたら、 「可愛げがなくて悪かったな」 陽斗にぷいっとそっぽを向かれた。 「心の声がただ漏れだ。いい加減学べ」 新に苦笑いをされてしまった。

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