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第94話
陽斗と新がつきっきりで看病してくれた。
「仕事があるのにごめんね」
「気にすんな。具合が良くなったらいっぱい構ってもらうから」
「そう。覚悟しておけ」
ニカッと悪戯っぽい笑みを浮かべる二人。ものすごく嫌な予感がするのは気のせいかな。その直後に陽斗の携帯が鳴った。
「誰から?」
「絢斗さんからメール。今日も来てくれるって」
「仕事は?」
「リモートワークで出来るからって」
「過保護すぎないか?」
「そういう新もだろ?」
「俺より陽斗だろ?過保護なのは」
「お前にだけは言われたくない」
また喧嘩がはじまるのかなと思ったけど、出勤時間が過ぎていることに気付き新が慌てて玄関に走っていった。
「相変わらず賑やかだな新は。今日金曜日だろ?土日ゆっくり休んで月曜日から仕事に復帰したら?」
「うん、そうする」
「俺が仕事でいないから湊と二人きりだって馬鹿みたく喜んでいるんだ。体はでかくなっても中身は六歳児のまま。ぜんぜん成長していない」
参ったな、やれやれと深いため息をつく陽斗。
一回ハグさせてくれ。新と同じように布団のなかでそっと抱き締めてくれた。
「……癒される……幸せだ」
陽斗が子どものように顔をほころばせた。そして新と同じように顔を首元に寄せると、鼻を近付けてきて。クンクンと匂いを嗅ぎ始めた。
「くすぐったい。昨日お風呂入ってないから……」
「湊が寝ている時に体は拭いたよ。隅から隅まで。まだ気持ち悪い?」
陽斗の言葉に一瞬固まってしまった。
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