99 / 130
第99話
ドンドンと強くドアを叩く音が聞こえてきた。
「新と陽斗さんの言う通りやっぱり来たか」
「あの、絢斗さん……」
「杏南さんだよ。帰国したその足で文句を言いに間違いなくここに来るって陽斗さんが話していたから」
「なんで」
「なんでって七海家に害をなす疫病神がここに二人もいるんだもの。自分のことは棚に上げておいてよく言うよね。社長夫人としていい暮らしをしてきたのにそれを失うことになるかも知れない。だから焦っているんじゃないかな」
絢斗さんがどこかに電話をかけはじめた。
「ちょっとした知り合い」
二言、三言話すとすぐに電話を切った。
「コビヤマの株価が下落している。これだけの不祥事が続いているから信用問題にもなるよね」
相手にしなかったら今度はピンポンピンポンとインターフォンが鳴りっぱなしになった。
「録画されていることになんで気付かない?湊に対する嫌がらせに対しては法的措置をとると陽斗さんから警告されているのに」
はじめて知ったから驚いた。
「酔っ払っているのかも」
「だからといって好き勝手は許されるものではないよ」
「絢斗さんがいてくれて良かったです。僕一人だったら怖くてこんなに落ち着いていられなかった」
「それは俺の台詞だよ。ほら」
両手を広げる絢斗さん。汗でびっしょり濡れていた。
「昔いろいろされたからトラウマになっているんだ。俺が怖がる姿を見て喜ぶ人だから、あの人は。もう少しの辛抱だよ」
ともだちにシェアしよう!

