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第102話

「あの人たちをぶっ潰すは俺と凱の役目だよ。陽斗さんは手を汚すことはない。新もだよ。二人の手は湊を守り、そして抱き締めるためにあるんだから」 「父さん」 新が心配そうな顔で絢斗さんをじっと見た。 「心配しなくても警察沙汰になるようなことはしないから。安心して。だって今は便利なモノがあるでしょう」 ニカッと笑いながら携帯を掲げる絢斗さん。 「うちの可愛い息子たちと陽斗さんに何をしてくれてんだってふつふつと怒りがこみ上げてきているんだけど、あの人たちを相手にまともに戦っても勝ち目はないから」 「ごめん絢斗さん」 「何で陽斗さんが謝るの。謝る必要はないよ。あ、そうだ。頂き物のゼリーがあったんだ。口当たりがいいかなって持ってきたんだ。ちょうど人数分あるし。ちょっと待ってて。食べてから仕事に戻ったら?」 絢斗さんなりに気を遣ってくれて。三人にしてくれた。 「下でエレベーターを待っていたら顔の怖い人たちがぞろぞろとおりてきたから何事かと思った。あの中に杏南さんがいたんだ。ぜんぜん気付かなかった」 「実は俺も気付かなかった」 「嘘だろ」 「なるべく会わないように避けていたから。こんなことを言うのは失礼かも知れないけど久しぶりに見たら老けて見えたから驚いた。人ってこんなにも変わるものなんだね」 「それってやっぱりアルコール依存性になっているってことじゃないかな?吉人さん、恋にうつつを抜かしている場合じゃないのに」 「彼に何を言っても無駄だ。諦めろ」 「それもそうだよな」 陽斗と新が深いため息をついた。

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