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第103話

「父さんごめん遅くなって」 夜の八時過ぎ。新が息を切らして帰ってきた。 「お帰り新。そんなに急いで帰ってこなくても大丈夫なのに」 「父さんを早く帰さないと父さんに怒られるだろ?それよりも大変なんだ」 「そんなことで怒らないよ。何が大変なの?」 「湊と同じ経理課の……」 なにげに新と目があった。 「起きてて大丈夫なのか?体は?辛くない?頭は?痛くない?」 「熱は下がったからもう大丈夫だよ」 「大丈夫じゃないだろ?風邪は万病のもとっていうし」 絢斗さんがぷぷっと笑った。 「過保護だね新も」 「父さんには言われたくない」 頬っぺをこれでもかと膨らませる新。 「新、もしかして相沢さんに何かあったの?」 「会社を辞めるって」 「え?嘘……」 「川瀬さんから聞いたときは俺も耳を疑った」 「なんで?」 「理由は知らない。帰り際辞職願が部長の机の上に置いてあったのを土居さんが見付けた。相沢さんだけじゃなく白井さんも犯人隠匿の容疑で警察から取り調べを受けた。おそらく椿原さんも。だから相沢さんが辞める理由はない。だって今辞めたら疑われるだけだろ?」 「そういえば相沢さんね、ダメ男に沼ってばかりで、男はもう懲り懲りと言いながらも彼氏がほしい、新なんかもろタイプなんだって同僚たちと騒いでいた」 「マジか」 新がためいきをつきながら額に手をあてた。

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