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第107話

「湊に恨みがある。そう言ったんですか?」 陽斗の顔つきが険しくなった。 「私も人事部の部長も耳を疑ったわよ。今まで湊が誰かを傷付けたとか泣かせたとか人様に迷惑をかけたとかそういうの一度も聞いたことがないがないし、それに湊の人となりを知れば知るほど好きになっちゃうもの。恨みを買うようなことをするわけないって」 「俺ら以外の人間が湊のことを好きになって欲しくないです。湊は俺と新の恋人ですし。川瀬さんは例外ですけど」 「そう言ってもらえて嬉しいわ。湊、大丈夫?」 川瀬さんが心配そうに僕の顔を見た。 大学を卒業した相沢さんがコビヤマに入社してきたのはちょうど二年半前だ。新入社員研修を経て、経理課に配属された。真面目で仕事熱心。机も隣同士で、相沢さんに正直に新と陽斗と付き合うことになったと話したら、二人ともイケメンだしいいなぁ~~羨ましい。私も彼氏が欲しいって土居さんといつも二人で騒いでいた。 「まさか新のご飯が食べれる日が来るなんてね。楽しみ」 「かほりさん、見舞いに来たんですよね?」 「そうなんだけど、いろいろあって昨夜からなにも食べてなくて。ご飯を食べさせてください。お願いします」 両手を合わせる川瀬さん。 「それなら前もって連絡下さい。今日だけ特別ですよ」 「はい、分かりました。以後気を付けます」 陽斗のほうがうんと年下なのに。川瀬さんがぺこぺこと頭を下げていた。

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