108 / 130
第108話
「一番上は大変ですね」
「そうなのよ。同じ一番上の新なら分かってくれると信じていたわ」
「川瀬さん、すずかさんは大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。湊、大きなお世話かも知れないけど、彼氏たちの前で女性の名前を出さないほうがいいわよ。あと男性の名前も」
「なんでですか?」
「天然なのか、わざとなのか……ここまでくるとある意味たいしたものね」
川瀬さんが額に手をあてて苦笑いを浮かべた。
「恋愛のれの字も知らないような純粋な湊が、今までよく悪い大人に騙さずにきたものだわ。これだけ可愛いと変態が寄ってきてもおかしくないでしょう」
「俺の目が黒いうちは誰一人湊に近づけさせませんよ。指一本触れさせませんよ」
大きなおにぎりを真顔でたんたんと頬張る陽斗。見た感じそんなに大きいようには見えないけど、新の手は大きくて、僕の手がすっぽりと入る。だから新が握るおにぎりも自然と大きくなるわけで。まさにばくたんおにぎりだ。なかに何が入っているか食べるまでは分からない。
「独り占め陽斗が共有するってことを学んだもの。大人になったよね。お姉さんは嬉しいよ」
「いつから俺の姉になったんですか?かほりさん酔ってます?」
「酔ってないわよ」
川瀬さんはいつになく上機嫌だった。背中をバンバン叩かれて陽斗は迷惑そうにため息をついていた。
ともだちにシェアしよう!

