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第109話

「相沢さんに恨みを買うようなことをした覚えはないのに。なんで」 「逆恨みかも知れないわよ」 「逆恨みですか?」 「湊は気付いていないと思うけど、死ぬほどモテるのよ新。スタイル抜群だしあのルックスだし、御曹司で、聞き上手で、優しくて、気遣い上手で、新は第一印象からして一味違うの」 「そうなんですか」 「そうよ。知らぬは湊だけよ。イケメンといつも一緒にいるから美的感覚が麻痺しているんじゃない?」 くすっと川瀬さんが笑った。 「相沢さんに交際を申し込まれたとき新は好きな人がいる。その人は男性で彼以外の誰かを好きになることはないと当たり障りの言葉を選びつつきっぱりと断ったの。でも相沢さんは諦めきれなくて、その人のことを好きでいいから付き合って。もしその人と両想いになれたらそのときは潔く身を引くから。しつこく食い下がったみたいね。それがちょっとした問題になって人事からちゃんと仕事をして下さいと注意を受けたの。それからは大人しくなったみたいだけど」 「どこが大人しくなったんですか」 陽斗がむすっとした表情でカフェオレが入ったマグカップを川瀬さんの前においた。 「ちょっと陽斗。そんな顔をしないの。イイ男が台無しよ」 「イイ男である必要はないんで」 「湊、陽斗が怖いよ」 川瀬さんに抱き付かれそうになった僕をぐいと自分のほうに引き寄せる陽斗。目は笑っているけどこれは間違いない。かなり怒っている顔だ。

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