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第110話
テーブルに頬杖をついてじっと陽斗の顔を見る川瀬さん。
「俺の顔になにかついてます?」
「やっぱり兄弟よね。見れば見るほど新によく似てるわ」
「藪から棒になんですか。新とはどこも似てませんよ」
「似てるじゃない。あ、そうだ」
ぱちんと両手を叩く川瀬さん。
「入り込める余地がないってすずかが寂しそうに言ってたのを思い出したわ。すずかにとって初恋だったのよ。本気で陽斗のことが好きだったのかもしれないわ。そういえば相沢さんも同じことを言っていたわね」
キッチンで洗い物を済ませた新がくしゃみをしながらマグカップを手に戻ってきた。
「もしかして俺の噂をしていました?」
「よく分かったわね。悪い噂じゃないから安心して」
「相沢さんに同性が好きだと正直に言うのもかなり勇気がいりました。隠しておいたほうが誰も傷つかない。変に期待を持たせてしまったらそれこそ失礼でしょう」
「そりゃあそうなんだけどね。毎日会社で顔を会わせるじゃない?気まずくなかった?」
「湊以外興味がないから分かりません」
「きっぱりと言うね」
「だって本当のことですから」
新がにっこりと微笑んだ。
「川瀬さん、さっきから電話が鳴ってませんか?出なくていいんですか?」
「よく気付いたわね。さすがは陽斗。よく見てるわね」
携帯をバックから取り出すもののはぁ~と深いため息をつく川瀬さん。
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