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第111話
「もしかしてすずかさんですか?」
「ダメ男だと頭では分かっているんだけど、気付いたときには沼にはまって抜け出せなくなっていた。これで分かったんじゃないかな?病院に行かないと……」
「送っていきますか?」
「その気持ちだけありがたく受け取っておくわ。湊の側にいてあげて。タクシーを呼んだから。すっかり長居してしまってごめんね」
川瀬さんがゆっくりと立ち上がった。
「ねぇ、湊」
玄関のドアノブを手を置いてふと声を掛けられた。
「陽斗とすずかがこのまま結婚していたら、湊ならどうした?」
急に話しをふられてすぐには答えることが出来なかった。僕を見る陽斗と新の視線が痛い。
「そのタイミングで新に告白されたら。陽斗に思いを残しながら新と交際をはじめるか、それとも叶わぬ恋だと知りながらも陽斗をずっと思い続けるか。二者択一ならどっちを選ぶ?」
「ええと、その……。うーん」
ためらいの言葉を多用して質問にすぐに答えることが出来なかった。
「湊にはちょっと意地悪な質問だったわね。ゴメンね、気にしないで」
川瀬さんが手を振りながら帰っていった。
「相変わらず嵐のような人だね」
「勇往邁進だからね、川瀬さんは」
湊に甘えるの次は俺の番。と言いながら嬉しそうに膝の上にごろんと横になる新。
「俺、これから仕事なんだけど。もしかして喧嘩を売ってる?」
「売ってない。三分だけ湊に甘えさせてよ」
新がゆっくりと目を閉じた。
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