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第118話

「今日もいるぞ。陽斗のストーカー」 「俺じゃなく、コータのだろ?バイト先の客じゃないのか?」 「それが心当たりがないんだよね」 電柱に隠れるようにジーンズにフードを目深に被った人物がこちらをじっと見ていた。あまりじろじろ見ると逆に警戒されるかと思い目を逸らしてなるべく見ないようにした。 「あ、そうだ。陽斗が来たら来週発売予定の新作のスイーツを味見してもらおうと準備をしていたんだ。持ってくる」 店長さんがカウンターへと戻っていった。 「陽斗、彼は?」 「高校の時の同級生だ。名前は神《じん》洸太《こうた》だ。ホストクラブで働いて金を貯めて念願だった自分の店をオープンさせたのはいいが、なかなかお客さんが入らなくて借金ばかりが増えていってにっちもさっちもいかなくて昼は喫茶店、夜はホストクラブで働いていたんだ。でも働いていたホストクラブが風営法で摘発されてコータも事情を聞かれたみたいで何かトラブルを抱えていないか心配なんだ。迷惑を掛けるからと肝心要のことはなにも話してくれないんだ」 「どこかで会ったような気がしたのですがやはり高校の同級生でしたか。神さまといえば……」 「俺も彼も家庭が複雑でいろんな事情を抱えていたからな」 「左様でございます」 菅沼さんがチラッと窓の外を見た。 「やはりどこかで会ったことがございます」 携帯を取り出すとカシャッと一回だけボタンを押した。

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