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第119話
「陽斗お坊っちゃまと新さまはご自分の身くらいは守れますのでまったく心配はしていません。でも湊さまに危害が及ぶことがあってはなりませんからね」
「菅沼……」
陽斗がなにかを言いかけたとき、陽斗と新の携帯がほぼ同時に鳴った。
「新は誰から?」
「絢斗父さんから。陽斗は?」
「凱さんから。電話が来るなんて珍しい」
「湊、菅沼、電話をしてくる」
「すぐ戻るから待ってて」
陽斗と新が携帯を耳にあてて席を立った。
女性はいつの間にか消えていた。
「陽斗、新、何があったの?」
数分後、戻ってきた二人に聞くと、
「本家で火事みたいだ。若い男女数人が救急車で運ばれたらしい」
「菅沼さんが逃げ遅れたのではないか、父さんたちが心配していて、一緒にお茶をしているって話したら安堵していた」
「実は凱さまに仕事を辞めたことと、大旦那さまのもとに行くことはまだお伝えしていなかったんです。いつかこうなるとは案じておりました。長い間七海家に誠心誠意お仕えしてきましたが私みたいな年寄りの話しには一切耳を貸してくれず、煙たがれるようになりましてね」
「人生の大先輩としてよかれと思ってアドバイスしたのに弟たちにしてみたらうっとしい、ウザイ、無駄遣いをするなって他人が口を出すな、としか感じ取れなかったのだろう。菅沼が本家の台所事情に一番詳しいというのに。嫌な思いをさせてしまい悪かった」
陽斗が頭を下げた。
「陽斗お坊っちゃまはなにも悪くございません。お願いですから頭をお上げください」
菅沼さんがあわてて陽斗に言葉を返した。
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