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第120話
「何があった?」
「旦那さまと奥さまが不在なことをいいことに本家は坊っちゃまたちとそのご友人たちのたまり場のようになってしまいました。朝から晩までどんちゃん騒ぎです。何度も注意をしたのですがまったく聞き入れてもらえませんでした。通いの家政婦たちもそんな坊っちゃまたちに嫌気がさしたのでしょう。私と一緒に全員辞めました。実は二日前にも寝タバコが原因でボヤ騒ぎがあったばかりで。火事がいつ起きてもおかしくない状況でした」
「方や父親になるというのに。何をしているんだか。悪阻がひどくて入院をしているのに遊んでいる場合か」
「楽なほうにばかり逃げているのでしょうね。陽斗お坊っちゃまと新さまみたく伴侶に選んだ方をなぜ大事に出来ないのか理解に苦しみます」
「菅沼、相沢という名前に心当たりはあるか?」
「相沢、ですか?」
菅沼さんが顎に手をあててしばらく間考え込んでいた。
「あ、もしかして……」
「心当たりがあるのか?」
「かれこれ二十年くらい前になりますかね、相沢という名前の家政婦が住み込みで働いていました。離婚して娘を施設に預けているからお金を貯めて娘を迎えに行き二人で暮らすのが夢だと常々申されていましたが……」
「だいたい予想はつくから話さなくていい。相沢さんは娘と暮らせたの?」
「いえ」
「娘は?」
「そのまま施設で育ったと思います。旦那さまの言いつけで一度だけ面会に行きましたが……」
「本家の仏間の押し入れに雑に入れてあった骨壷、あれ、もしかして相沢さんの?供養もせずになんであんな薄暗いところに放置しているのか気にはなっていた」
「坊っちゃまは気付いてらっしゃったんですか」
陽斗の言葉に菅沼さんが驚きその後は黙り込んでしまった。
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