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第129話

その後、平沢さんを匿い逃走を手助けとして相沢さんが逮捕された。 相沢さんは黙秘を貫き平沢さんのことは一切口にしなかった。 「湊、ごめんね」 「川瀬さんどうしたんですか?」 「すずかが病院を抜け出してあなたに会いに行ったの」 「え?嘘……」 切迫流産のおそれがあるから絶対安静だと川瀬さんから聞いていたから、待ち伏せをしていたのはすずかさんだったと知り驚いた。 「本当に馬鹿な子。侑大と悠真と一緒にいた女友だちを巻き添えにして放火して自殺を図ったの」 「そんな……」 愕然とし言葉を失った。 「赤ちゃん助けられなかった。なんでこんなことになってしまったんだろう。私がアメリカに出張に行かず、すずかの側にいてあげれば違ったのかな。侑大だけは止めなさいって止めることが出来たのかな。今さら後悔しても遅いんだけどね」 川瀬さんが両手で顔を覆った。 ―二人が惹かれあっているのを知ってて私黙っていた。だって陽斗が好きだったから。でも湊さんにはやっぱり敵わないってことが分かった。湊さん、私の分まで陽斗と幸せになって。そう伝えたかったけど、どうしても一歩、踏み出せなかった。ごめんね、苦しめて― 川瀬さんが携帯を操作してお留守番サービスに残されていたすずかさんのメッセージを聞かせてくれた。涙がどっと堰をきったかのように一気に溢れた。 最後の最後まで知らぬ存ぜぬ、社長職は辞さないと自信満々な姿勢を見せていた吉人さんだったけど、臨時株主総会で一連の騒動の責任をとらされる形で会社を追われることになった。凱さんは外部から社長を招聘することを提案した。 凱さんは最初から会社には残らず辞めることを決めていた。役員や社員が必死で引き留めたけど凱さんの決意は固かった。

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