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第19話 悋気を注ぐ夜 ※R18

R18表現あります。長いです。 悋気を注ぐ夜  ふたりでもつれるようにベッドになだれ込む。一郎の大きな手が肌をするりと愛撫してから、部屋の電気を消していないことに気づいた。 「いちろ、待てっ……電気」 「朝陽……今日はさ、明るいまましない?」 「な、」  明るい場所で脱いだら、一郎に恥ずかしいところを全て見られてしまう。何度も夜を重ねておいて今更かもしれないが、それでも羞恥心が拭えない。 「朝陽の全部が見たい……ダメかな……」  恋人にそんな甘えた声を出されて、嫌と言える男がいるだろうか。何より、今日は一郎をとことん甘やかしたいと思って誘ったのだ。自分の羞恥より彼の気持ちを優先したい。  ──オレ、もしかして、こいつに甘すぎるのかな。でも、こいつが甘えるの、オレだけだから……。 「……わ、かった……今日はお前の好きにしていい……」  一郎の手が朝陽の着衣を乱していく。全てを白日の下に晒される羞恥に耐えて、朝陽はぎゅっと目をつむった。 「ああっ、う、ぁう、ひっん……! いちろ、そこっ、あ、イく、またイくからぁっ……!」  一郎の指が内壁のしこりを何度も擦る。三本の指で後孔を広げられている時点で、朝陽はもう二度も達していた。腹にはべっとりと白濁がついている。そしてまた、一郎から与えられる快楽によって鈴口から涙が零れていた。 「うん、朝陽がイくところ、何回でも見せて……すごく綺麗だよ……」 「ぁ、ひゃぁっ! あ、あンっぁ、あッぁあッ!っひ、ひぅっ、あ、あ!」  一郎に感覚の全てを支配される。切なくて甘い痺れが身体中を奔っていった。ぐり、と人差し指でしこりを強く押し込まれた瞬間、びゅく、と我慢できずに精液が溢れた。 「朝陽……いれるよ」  一郎の身体が一度離れて、コンドームを手に取る。腹につきそうなほどに勃起したそれにゴムをかぶせているのを眺めながら、朝陽は一郎を喜ばせたいと思った。一郎が朝陽の特別で、唯一無二なのだと証明したい。 「い、ちろ……」  両足を大きく広げて、秘所を彼に晒す。指が出ていった後孔をゆっくりと自分の指で開いた。そこは一郎を求めてひくひくといやらしくうごめいている。 「お前が、欲しいの、見えるか……?」  この明るさでこんなことをするなんて、恥ずかしいことこの上ない。今にも死んでしまいそうだ。けれど、彼に知ってほしかった。朝陽が求めているのが、一郎であることを。  とろ、と後孔から潤滑剤が垂れる感覚がして、ふるりと身体を震わせる。 「っ、朝陽っ……!」  欲望を抑えきれない雄の声。太ももを掴まれて、ぱちゅんっ! という激しい音と共に男の屹立が一気に内壁を貫いた。 「ひ、アっ──────!」  それまで愛されていなかった胎の奥を突かれて、あまりの快感に白が性器から溢れる。 「朝陽、朝陽っ……! ダメ、かわいすぎるっ……!」 「あっ、あ! いち、ろっ、 ひぁ、あんっ、ぁ、ぅあっ!」  達したばかりの敏感な肉の壁を、何度も何度も擦られる。熱い屹立に内側を拓かれて、朝陽の身体は歓喜に震えた。 「ぁ、あっ、激し、きもちい、あっ! っん、ひぅっ! 」  いつもの、甘く蕩かすような動きではない。朝陽を求めて、快感の海に堕とそうとする男の律動。 「俺の、俺だけの朝陽……愛してるよっ……もっとかわいいところ、見せてっ……?」 「あ、あぅっ、あっ!あん、んうっ、ひっ、ンあっ!」  屹立が激しく朝陽の弱いところを突き上げる。自分のものとは思えない喘ぎ声が溢れて止まらない。朝陽はあまりの気持ちよさに後頭部をシーツに擦りつけた。 「ふ、ぁッああ! ぅあ、あ、あ、あンっ、っぁぅっ! んぁ、ァっ! いち、ろぉっ!」 「うん、気持ちいいね、俺もすっごくいいよっ……朝陽、もっとちょうだい……」 「ぁ、んぁ、ぅっ……」  彼が求めるのなら、応えたい。朝陽はもう一度足をはしたなく広げ、繫がっている箇所を明かりの下に晒した。 「こんな、恥ずかしいの、見せるのっ、お前、だけ、だからぁっ……!」  きゅうきゅうと屹立を締め付けて男を求めている姿なんて、絶対一郎以外に見せない。朝陽は喘ぎながら腹に力を入れて、一郎の雄を強く抱き締めた。 「っ、朝陽……うん、よく見えるよ……。俺のこと大好きって思ってるの、すごい伝わってくる……」  抽挿が激しくなる。一番奥を連続で突かれて、脳に甘い電流が走った。 「は、ぁっ! ひぁっ、んっ! は、ぁ、あッ、ぁぁっ、ぁ、ひっ、あっ!」 「っ、ごめん朝陽っ……朝陽のナカ気持ちよすぎて、もうイきそうっ……」  一郎の頬に汗がひと筋伝う。朝陽はそれを拭って、ぎゅうとしがみついた。身体が密着したことで、律動がより深くなる。朝陽の性器に熱が溜まって、早く吐き出してしまいたいと望んでいるのがわかった。 「オレ、も、イくっ……! きちゃぅっ……!っひ、ぁっんぁっ、は、ぁ、あッ! ぁ、くるっ、ぁぁっ!」 「朝陽っ、朝陽っ……!」  屹立が最奥を貫く。宙を蹴る足が、指の先までぴんと張り詰めた。 「っぁ、イく、あっ、あ────────!」 「っ、く、ぅっ……!」  終わりのない甘い痙攣。快感が背筋を駆け上がり、脳を揺らす。内腿がびくびくと痙攣して、腹の上に粘性のある液体が散る。それとほぼ同時に、避妊具越しに一郎の欲望が溢れたのがわかった。 「ぁ、あ……はーっ……はーっ……」 「っ、あさひ……」  屹立を抜かないまま、一郎が朝陽を抱き締める。朝陽は酸欠の脳を必死に動かして、子どもをあやすように、その背中をぽんぽんと叩いた。 「いちろう、好き……」  ぽつりと言葉が零れる。それは自分の想いを伝えるためだけの言葉ではない。一郎を幸せにするための言葉だった。  ──甘やかしたいって、こういう気持ちなのか。確かに、少し癖になりそうな気がする。 「うん、俺も……大好き……」  ちゅ、ちゅ、と何度も口づけが降ってくる。事後の甘やかな空気の中で睦み合っていると、朝陽の身体の中の屹立がまた質量を増した。 「っあ、一郎っ……」 「ごめん、もう一回……朝陽が欲しい」  鳶色の瞳に懇願されて、胸がきゅんと疼いた。こんな一郎、他の誰も知らないのだ。 「お前が、したいだけいいからっ……ン、あっ! ひぅっ、っ、はっ……!」  答えると、一郎は屹立を激しく抜き差しする。淫蕩に身を任せれば感覚器官をより一層鋭敏になり、朝陽は目の前の男に身体の全てを明け渡した。 「ねえ、キスマークつけていい?」  一郎の腕の中で温もりに浸っていると、そんなことを聞かれた。 「好きにしていい、って言っただろ」 「そういうの見えるの、嫌かなって思って」 「……もう村尾さんと日浦に相手がいるのはバレたから、部署中に広まるの時間の問題だしな……」 「じゃあつけるね。ちょっとチクっとするかもしれないです」 「注射かよ……」  一郎が朝陽の首に唇を這わせる。そしてじゅうという音と共に、肌に小さな痛みが生まれた。きっとその箇所には赤い花弁が咲いているのだろう。 「うーん、これで合ってるのかな」  どうやら彼もキスマークをつけたことがないらしい。初めてのそれを見ながら首を捻っている。 「……噛み跡、つけるか?」  そちらの方がわかりやすいだろう。そう思ってもう一度首筋を晒した。 「いいの?」 「駄目だったら言ってない」  あの『菩薩』の噛み跡なんて、誰も想像ができないだろう。彼の独占欲を身体に刻み付けられるのは朝陽にとっても嬉しいことだった。  ──オレしか知らないこいつって、すごく可愛いって思っちゃうんだよな……。こんなので優越感感じるなんて、性格悪いかもだけど。 「じゃあ……」  はぐ、と一郎が歯を立てる。先程より広範囲の痛み。ぺろりとぬるい舌が噛み跡を舐めて、彼は満足そうに笑った。 「うん、綺麗についた。でもあんまり人に見せないで欲しいな。嫉妬しちゃう」 「じゃあつけた意味ないだろ……」 「俺だけ知ってればいいかなって」  ふふ、と笑いながら強く抱き締められる。一郎が自分のことに関してだけは心が狭くなることにどうしようもない喜びを感じながら、朝陽は彼の唇に触れた。 「新谷さん、彼女さんと普段どんなデートしてるんですか?」  月曜日のおやつ休憩。日浦がコンビニ限定のプリンを差し出しながら聞いてきた。甘いもので釣れると思っているのだろうか。 「言わない」 「そんなあ……」 「おっ、また恋バナかな~?」  後ろからぬるりと村尾がやってくる。だがもう一郎に釘を刺されたので、彼のことを話すつもりはなかった。 「村尾さん、何言われても話しませんからね」 「ええ~つれないなあ~」 「あいつに、『かわいい顔他に見せないで』って言われたので」  一郎からしたら彼の話をしている朝陽がとても可愛かった、らしい。だから恋人に関する話は会社でしないで欲しいと言うのが、彼のお願いだった。 「ふう~ん……惚気てくれるじゃん」 「ラブラブですね!」 「っ、違……あいつが言ったことそのまま言っただけです!」 「それが惚気なんだよな~」 「惚気てません!」  朝陽は目元を赤らめながら否定する。  その後、営業に一郎がやってきて、後でメッセージで『かわいい顔見せないでって言ったのに』と文句を言われたのは、また別の話だ。

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