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第二章 第5話 前髪と君※R18

前髪の話です。R18描写ありです。 番外編 前髪と君※R18   「……ん…………」 「おはよ、朝陽」  まどろみの中で目を開けると、一郎が幸せそうに朝陽の顔を眺めていた。 「……おはよう…………なにしてたんだ……?」 「朝陽がかわいいから見てました」 「…………オレの寝てるところなんて可愛くないだろ……」  一郎の言葉に顔が赤くなる。一郎のように顔立ちが整っているならともかく、ただの成人男性の寝顔が可愛いとは思えない。 ──こいつは多分、好きになったらなんでも可愛く見えるタイプのやつだ。 「世界で一番かわいいよ? 気持ち良さそうに寝てる顔も、髪型も」 「髪型?」 「前髪、下ろしてるから。ふふ、さらさらだね」  彼が優しく朝陽の前髪に触れる。確かに普段、朝陽はオールバックだ。額を隠している時は少ない。なるべく周囲に舐められたくなくて、オールバックを選んだ過去がある。朝陽なりの武装だ。 「オフの姿って感じがして、すっごくかわいい。キュートってこういうことだね」 「髪型だけでそんなに変わらないだろ……大げさだな」 「そんなことないよー、朝陽にも髪型が変わった時のギャップ萌えをわかってほしいなあ」  そう言いながら、一郎は朝陽を腕の中に閉じ込める。  朝陽は髪型が変わった一郎が想像できず、くしゃくしゃの金の髪を更に乱してやった。  それから数日後の夜。ベッドの上で、ふたりの男が身体を重ねていた。  朝陽の身体は奥深くまで一郎の欲望を飲み込んでいる。 「っあん! ひゃ、ぅあ、ぁっ、あ!」 「っ、は……、前髪、邪魔だなっ……」  汗を吸った前髪が不快なのか、不意に一郎が髪をかきあげる。すると、形のいい額があらわになって、いつもよりも彼の男らしさに磨きがかかった。  普段はふわふわとした、温かな鳥の巣のようなそれが、汗でコントロールが効いたのかいつもより長く見える。 「っ!」  優しい一郎らしからぬ姿に、胸と後孔がきゅうと疼く。 「ぅあっ……あ、さひ? どうしたの? 急に締まったけど……」 「か、かみが」 「髪?」 「きゅ、急にっ、前髪かきあげたから、ドキドキしたんだっ!」  数日前に一郎が言っていたことがようやく理解できた。確かにこれは胸が破裂しそうなほどときめいてしまう。 ──駄目だ、なんだよこのかっこいい髪型! 卑怯だろ! 「……へえ、そっか」  雄らしさの増した一郎の顔が近づく。そして朝陽をぎらついた目で眺めながら、事実を確認し始めた。 「朝陽、この髪型好きなんだ?」  ほぼゼロ距離で甘い声を囁かれてしまえば、また一郎を受け入れているところが強く絞まる。 「や、顔近づけるなっ! かっこいいから駄目だっ!」 「ふふ、朝陽がかっこいいなんて言ってくれるの、はじめてだね」  一郎が朝陽の両頬を包む。顔を固定されて目がそらせない。 「ほら、よーく見て? 朝陽だけの俺だよ? 好きなだけキュンキュンしていいよ?」 「っひ、ぁ……!」  情欲と愛に満ちた鳶色の瞳、乱雑にかきあげられた金色の髪、あらわになった額の肌。  あまりにも色っぽい──これほどまでにあでやかなものを、朝陽は見たことがなかった。 「っあ、だめ、いちろっ、かっこいい、だめっ、あっ、あ、ぁ──────!」  胎がきゅうきゅうと疼いて、朝陽の性器から勢いよく白が溢れた。 「朝陽……俺の顔見ただけでイッちゃったの?」 「っあ、は、ぁっ……! ゃ、ちがっ……、だって、いちろうがぁっ……!」  朝陽は涙目になりながら、身体をひくひくと痙攣させる。今会話をしているこの時も、一郎の顔を見続ける限り快楽は止まらない。 「男、らしくてっ、かっこいい、からっ……好きすぎて、イッたっ……」 「……うん。じゃあ……この髪型で動いたら、朝陽はもっと気持ちよくなるね?」 「ひぅっ! ぁ、ひゃ、あっ、あ、ぁあっ!」  ぐちゅ、と屹立が敏感な肉の壁を擦る。男の赤い舌がちらりと覗いて、それだけで腹部がひくっ! と跳ねた。 「ぁ、いち、いちろっ、あっ、かっこいいっ、っあ!」  一郎の前髪からはらりとひと筋金が落ちる。それがよりいっそう男のエロスを強くした。  一郎は確かめるようにゆっくりと朝陽の腹の中を行き来する。 「っ、すごい締まる……奥突いたら、どうなっちゃうのかな……」 「あっ、いちろうっ、その顔っ、また、ぁ、あっ────!」  一郎の顔が快感に歪む。この世で一番艶やかな男の顔を見せられて、朝陽はまた達してしまった。 ──違う、オレが面食いとかじゃなくて、こいつが本当にかっこよすぎるだけのはずなんだ……!  誰にするでもない言い訳を心の中で吐きながら朝陽は絶頂後特有の感覚に身体を震わせる。 「っ……あさひ、かわいい……そろそろ、激しくするねっ……」 「ぅあっ! あっ、あ、ひゃうっ、ぁ、ンぁっ、いちろっ……!」  屹立が水音を立てて激しく中を突く。朝陽は一切雄の顔をした一郎から目をそらせないまま、与えられる快楽の波にひたすらに溺れた。       

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