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第二章 第十話 恋愛の勉強※R18

恋愛の勉強※R18    結婚して一ヶ月と少しが経った。朝陽は常に思っていた問題を解決しようと、自室でスマートフォンをにらんでいた。  ──オレは、恋愛経験がなさすぎる。  そう、朝陽は一郎以外の人間と付き合ったことがない。だから恋愛経験値がとてつもなく低いのだ。それではよくないと最近思うようになった。  ──オレだって、一郎のこと喜ばせたい。ちょっとでも勉強して、どうにかしないと。  正直この歳になって一から恋愛の勉強なんて恥ずかしいが、一郎を幸せにするためならばその程度のことはやってみせる。そこで、まずはネットで情報を収集しようと思った。 「……どうやって調べようかな、『男同士 恋愛』とかで……」  ワードを入れて検索すると、いくつかのサイトが現れた。その中に漫画の販売ページがあることに気づく。 「漫画……?」  気になってリンクを押してみる。表紙はふたりの男性が抱き締めあっているもの。ジャンルには『BL』とあった。 「BL……って、なんだ……?」  試し読みをしてみると、どうやら男性同士の恋愛を描いたものらしかった。 「……なるほど、これなら…………」  これならば、恋愛のなんたるかを、しかも男性同士のものを勉強できるかもしれない。  朝陽は電子書籍を購入し、早速中身を読み始めた。主人公が頼れる幼馴染みに恋をし、すれ違い、結ばれるというものだった。  繊細な心情が描写されたそれに感動してページを進めると、ふたりは結ばれた後、ベッドにもつれ合い、互いの身体を求め始めた。 「ひっ!?」  ──何で!? 買う時年齢確認とかされてないぞ!? いいのかこれ!?  朝陽は生まれてからこの方エロ本を買ったことがない。あまりにも直接的な性描写に、顔が真っ赤になった。 「っ、べ、勉強の、ため……」  正直興味がないわけではないので、そう言い聞かせながら読み進んでいく。すると、主人公の相手が『口でしてほしい』と台詞を言っていた。 「口……?」  次のシーン、なんと主人公は、相手の屹立を口に含んで愛撫していた。 「ひぇっ!?」  本日二度目の悲鳴が漏れる。相手の男は主人公の頭を撫でながら口淫の仕方を丁寧に教えている。 『っ……気持ちいい……?』 『ああ……すごくいいっ……』  ふたりの台詞と男の顔から、快楽を感じているのがわかる。どうやらそれはフェラと呼ぶ行為らしかった。 「フェ、フェラ……」  やり方はこの本に書いてある。しっかりと読み込めば、朝陽でもできるのではないのだろうか。 「えっと、歯を当てないように……? 舐めて、吸って……? こ、こんなのできるのか……?」  ぶつぶつと独り言が部屋に響く。一郎から与えられた以外の初めての性的なものに驚きながら、朝陽はフェラチオの知識を馬鹿真面目に集めていった。     そして、実行の日はやってきた。金曜日の夜、一郎のベッドにふたりでなだれ込む。 「朝陽、いっぱいしようね……」  一郎が慣れた手つきで朝陽の服を乱して、素肌をあらわにさせる。いつもならそのまま愛撫に身を委ねるところだが、今日は勉強したことを実践したい。朝陽は一郎の手に手を重ねて、動きを止めさせた。 「? 朝陽?」 「一郎、その……今日は、オレからしてもいいか……?」  朝陽から一郎に奉仕したことはあまりない。そのため、一郎はきょとんとした後、嬉しそうに微笑む。 「してくれるの? ふふ、じゃあお願いしようかな」  以前、手淫ならしたことがある。きっと今回もそれだと思っているのだろう。 「その……座って、くれるか。そのほうがしやすいから」 「うん、わかった」  一郎がベッドに座る。朝陽は彼のズボンの前をくつろげて、下着の中から兆している屹立を出した。幹を擦っていくと、だんだんと硬さを増していく。 「っ……あさひ、上手……」  一郎は手淫が続くものだと信じている。だが、朝陽は硬度が充分になったのを確認して、顔をうずめて屹立を口に含んだ。 「は、えっ……!? ちょ、朝陽何してっ……!?」 「ん、ぅ」  わかってはいたが、一郎の屹立は大きく、全てを飲み込むことはできない。口に入れられるところ部分は口で愛撫し、それ以外の部分は両手を使って刺激を与えていく。 「っ、ぅっ、フェラなんて、どこで覚えてっ……!」 「んむ、んっ……」  びくびくと脈打つそれの先端に円を描くように舌を滑らせると、一郎が快楽に顔を歪ませる。朝陽が主導権を握ることなんて今までなかった。彼に愛されるのはたまらなく幸せだが、彼に奉仕するのもまた幸せなことなのだと実感する。 「ん……いちろう、気持ちいいか……?」  一度口を離して具合を聞く。その間も手の動きは止めなかった。 「いい、けどっ……」 「じゃあ、続けるぞ……どこが一番いい……?」  血管を浮き立てているそれに歯を立てないようにしながら、漫画でしていた通りに、裏筋に舌を這わせる。どうやらそれは間違いではなかったようで、鈴口からどんどんと先走りが溢れてきた。 「朝陽、ほんとっ……どこで覚えてきたの、こんなことっ……AVでも、見たの……?」 「ん、っ……漫画、で」 「漫画……? エロ漫画ってことっ……? っ、ぁっ……」 「BL、で、勉強した……んむっ……」 「っ、は……!?」  鈴口を吸い上げながら扱いていくと、屹立が限界を示すように震える。一郎を絶頂に導けているのだとわかって、朝陽はいっそう愛撫を強めた。 「っ、やば、朝陽、出るから離してっ……」 「ん、ん」  ふるふると首を振る。漫画の主人公は欲望を口で受け止めていた。ならばそうするべきなのだろう。朝陽は射精を促すように先端をちゅうちゅうと吸う。 「っ、ほんとに、だめだって……!」  一郎が腰を引いて屹立を口から抜いてしまう。だがほんの一瞬間に合わなかったようで、朝陽の口の中に苦い粘性の液体が少し零れた。 「ん、ぅ!?」  勢いよく引き抜かれた屹立から溢れた白は、朝陽の頬にかかってしまう。熱いそれがべっとりと肌につく感覚は未知のものだった。 「に、っが……!」  口の中がとにかく苦い。思わず舌を出して精液を吐こうとする。 「っ、ごめ……! 大丈夫!?」  一郎が朝陽の口元にティッシュを添えてくれる。朝陽はそこに精液を吐いて、顔を歪ませる。 「う……漫画だと、普通に飲んでたのに……」 「そういうのはフィクションだから! ああ、顔にもかけちゃった……」  一郎は優しい手つきで頬についた精液を拭ってくれた。 「BLで勉強って、情報量多くてビックリしたんだけど……どういう経緯があったの?」 「その……恋愛のこと、ちゃんと勉強したくて……それで男同士の恋愛漫画があるって知ったから、見てたら、フェラのこと描いてあって……一郎のこと気持ちよくできるかもって思って……もっとそういう、エロいことも勉強していかなきゃって……」 「オレのこと気持ちよくしたいって気持ちは嬉しいけど……無理はしないでほしいよ」 「でも……」 「それにね、これは俺のわがままなんだけど……朝陽が俺が教えたエロいことしか知らないっていうの、すごく興奮するんだ」 「……そう、なのか……?」 「そうだよ。ひっどいエゴだけどね。勉強しなくても朝陽は充分エッチで魅力的だし」  一郎の鳶色の瞳を見つめる。性のテクニックを知っていた方が、嬉しいものではないのか。 「で、でもその、恋愛の……駆け引き? とか、そういうの勉強しないと……」 「駆け引き? したいの?」 「し、したいっていうか、一郎が喜ぶかと……」 「うーん、これから先はわからないけど、現状はそんなの無くても俺たちはラブラブじゃない?」 「それは……そうだな…………」 「じゃあ今すぐ無理に覚える必要ないよ。俺たちは俺たちのペースでやっていこう?」  ぽんぽん、と頭を撫でられる。確かに、一郎を喜ばせたいあまり少し先走っていたかもしれない。 「…………うん」 「それはそれとしてすっごくきもちよかったから、またフェラはしてほしいなって思うんだけど」 「じゃあ、もう一回するか……?」 「ううん、次は朝陽のこと気持ちよくしたいな」  一郎が潤滑剤を手で温めて、朝陽の臀部を割り開く。とろりとした液体が秘部に触れて、ひくひくと震えた。 「あっ、んっ……! ゆび、ぁ、きもちいいっ……」  人差し指が入り込んできて敏感な身体の内側を甘く刺激する。 「いちろうっ、っあ、もっとっ……」 「うん、朝陽はここ好きだもんね……? 気持ちいいこと、これからもいっぱい覚えようね……」 「ひぁっ! ぁ、あっ、ひゃうっ、ぁアっ! んぁ、あ、あんっ!」  艶やかな声が止められない。襲い来る快楽の波に溺れながら、朝陽は一郎の広い背中に縋りついた。

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