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第二章 第三十五話 とけて、ひとつになって※R18
※R18表現あり
とけて、ひとつになって
寝室に淫靡な水音が響く。
「ぁあっ、あ、あっ! う、ぁんぅっああっ、は、ぁっ!」
朝陽は一郎の上に跨って夢中になって腰を振る。彼によって解された内壁は男の欲望を悦んで受け入れ、快楽に打ち震えている。
「っぁ、んぅっ、は、ぁひぁっ! ン、あんっ! 腰、止まらなっ……」
「朝陽、かわいいっ……すごくえっちだね……」
一郎の熱い屹立で肉の蕾を刺激するたび、甘やかな痺れが身体を覆う。それがもっと欲しくて、朝陽は口の端から涎を零しながら男の欲を締め上げた。
愛しい男の上に跨って精を搾り取ろうとするその様は、高級娼婦のそれだった。一郎から与えられる快楽を教え込まれた朝陽の身体は、淫蕩に耽って溺れていく。
「ぅあんっ! あっ、あンっぁっ! い、ちろっ、きもち、いいっ、か……? んァっ、ぁ、あッ!」
「っ、うん、気持ちよすぎてすぐイっちゃいそうっ……」
一郎の余裕のない表情に、胎と胸が疼く。彼に愛されるのもたまらないが、こうして自分から動いて彼に快楽を与えるのもひどく興奮した。
「いちろ、もっと、気持ちよくなってっ……あッ、んぁっ! ひぅっ、ひぁっ、んぅっ、ぁ!」
「っは、朝陽、ほんとうによすぎるっ……上手、だねっ……」
褒められたのが嬉しくて、より一層懸命に腰を動かす。ごりごりと前立腺を押し潰すと、快感で性器がかぶりを振った。
「あッ、んぅっぁ! あんっ、ぅあッ、ぁ、ぁっあ!」
「朝陽、奥もっ……」
「っ、う、んっ……っひぁっ! ぁ、おく、きもちい、イっちゃ、だめ、まだっ、ぁ、ひぅんっ!」
そう思うのに腰が止まらない。朝陽は一郎の腹に手をつきながら、胎の奥をこつこつと突いた。
「一番奥、してごらんっ……? 朝陽は、そこが一番好きだからっ……」
「ぁ、でも、イっちゃ……っぁん!」
「イっていいよ。俺ももう限界っ……」
「っ、……いちろうが、イくならっ……」
彼の言うことに従って、腰を一度高くしてから、一気に内壁を穿って最奥を突く。
「ひ、ぁ──────!」
快楽の波にさらわれて、朝陽の性器から白濁が零れる。内壁がきゅうきゅうと収縮して屹立を締め付けると、避妊具越しに欲望が吐き出された。
「っ、は、ぅ……」
ずるりと性器を引き抜く。避妊具にはしっかりと白が溜まっていて、彼が達したのがわかった。正直まだ足りないが、これ以上腰を動かすことはできない。せめて彼の体温が欲しくて、ぎゅうと抱きついた。
「いちろう……」
「っ、朝陽っ……」
これで満足しただろうか。そう思っていると、一瞬のうちの景色が反転する。慣れ親しんだ、視界いっぱいに一郎が映っている光景。押し倒されたのだと気付いた時、一郎はもう性器に新しいコンドームを被せていた。
「ごめん、俺も、したい」
「っ、馬鹿、駄目だっ……手ついたら怪我がっ……」
「大丈夫。手つかないようにするから……朝陽のこと、甘やかさせてっ……」
右の太ももを掴まれて、勢いよく身体を貫かれる。与えられる甘い衝撃に、身体がびくんっ! と跳ねた。
「ひぁ、あぁっ!? まて、いちろっ……! ッぁぅあっ! は、ぁっ、っひ、ぁッああ!」
「朝陽だって、まだし足りないでしょっ……? 俺のこと、こんなに欲しがってるっ……」
「んァっあ! あンっ、ひぅっ、ああっ、ぁっあんぁ、ひぅっ────!」
一郎からの愛に、身体は悦びきっていた。自分から動くのとは違う、予測のできない快感に、理性が消えていく。中を突かれる度、性器から白が溢れた。熟れた内壁は、達するたびに敏感になり、また男の熱を受けて達するを繰り返す。
「ぁ、ぅあっ、っぁっあ! また、イっちゃ、あ────!」
「うんっ……何回でもイって、朝陽っ……」
何度目かの射精を覚えて性器がびくびくと震える。白濁を出さんとしているのがわかって、朝陽はまたイく、と甘やかな死を覚悟した。
だが────。
「イく、イくっ……! は、っひ、ぁ、あッ、あ、あ、あ────!」
訪れる射精感。しかし、いつもと感覚が違った。粘度のある液体を吐いたのではなく、性器から透明な液体が断続的に溢れる。さらさらとしたそれは、あっという間に朝陽の腹とシーツを汚した。
「っ、え……?」
達した後も、性器は透明な名残を小さく吐き出している。これは、まさか。
「っ、オレ、もらしっ……!?」
性行為の最中に粗相をするなんて。それを理解した途端、羞恥心で涙が溢れそうになった。
「ぁ、あっ……ちが、いちろ、ちがうんだ、ごめんっ……! ちがくて、オレきもちよくてっ……!」
必死に弁明しようとすると、一郎は朝陽をあやすように優しく頭を撫でる。
「朝陽、だいじょうぶだよ。漏らしたんじゃないから」
「だ、だってこれ、せいえきじゃないっ……」
「これは潮って言うんだよ。気持ちよくなると出るんだ。漏らすのとは違うよ。だから大丈夫」
「し、お……?」
確かに色が透明だ。粗相をしたのではないとわかって、安堵が胸を満たす。
「……ちがう、んだな……? よか、った……」
「ふふ、安心した? でもね、俺は朝陽が漏らしちゃっても引いたりしないよ。ね?」
ぐちゅ、と律動が再び再開される。身体の奥深くまで侵されて、胎がどうしようもなく疼いた。
「っぁ、ん! あ、いちろっ……!」
「ね、朝陽が潮吹いてるところ、もう一回見せて?」
熱を持ったそれに身体を穿たれて、また甘さに全てを支配される。
「ひゃぁっ! ぁっあぅひぁっ! ぁひぅっ、っ、は、あッ、いち、ろっ、あッ! ひぅっぅあっ、ぁ!」
もう何度も達して鋭敏になった身体は、ほんの少し快楽を与えられただけで絶頂に至る。
「っひぅっ、またイく、でるっ……! いちろ、またでちゃっ……!」
「うん、気持ちよくなってるところ、俺に見せてっ……?」
「んァっ! んぁうっ、ぁあッ! イく、イっ……! ぁっあぁっ、あ────────!」
びゅるる、と透明な液体が長く放出される。壊れた蛇口のようにそれは止まらず、朝陽の腹を濡らしていく。
「ぁ、とまらなっ……! ゃ、ぁっ……!」
潮は断続的に、大量に鈴口から零れていく。自分の身体のことなのに、全く制御ができなかった。粗相でないとわかっていても、それに近しい感覚をベッドで味わっているのがひどく背徳感をもたらした。
「かわいい……いっぱい気持ちいいね、朝陽」
「いちろ、イくのとまらないっ……おかしくなるっ……!」
「うん、俺も気持ちよすぎてやばいっ……ふたりでおかしくなろ……?」
そうして、また欲望を深く穿たれる。激しく突き上げられて、嬌声を抑えることができない。
「ひゃぁっ! は、あっぁ、ア────! ふぁっ、んンっぁ、あッうあ、あンっ、あっ────!」
達しては敏感になり、敏感になってしまったから達して。朝陽の身体は終わりのない快楽のループに陥っていた。
もう何度潮を吹いたかわからない。ただ愛と快感が全てを支配している。透明な液体さえ全て出し切り、それでも交合は止まらない。当然、その時はおとずれた。
「ひぁんっ!? あ、い、ちろぉっ……! でないで、イくっ……! あンっ、んぁっ、ああっ、ひゃぅっ、ぁあっ!」
「ん……メスイキしそ?」
「うんっ……きもちいいの、くるっ……!」
身体の底からせり上がってくる感覚。それは段々と高みへと駆けあがっていき、この世にふたつとない快楽をもたらす。
「イく、あ、だめなの、きちゃうっ……!ひぅっ、っんぅっ、あぁんっ! ぁッっひ、あ、あ、あ─────────────!」
瞬間、脳が白に染まる。どこまで行っても終わることのない絶頂。身体はがくがくと震え、性器は何も吐き出していない。味わうことが恐ろしいくらいの多幸感が身体を満たした。
「っ、あ、あーっ……」
達した感覚はいつまで経っても収まらない。びくびくと内壁がうごめいているのがわかる。
もう快楽の頂点に至ったと思った、瞬間。
どちゅんっ! とまだ達している最奥に、屹立が突き立てられた。
「っひ、アっ───────! っぁ、ぇ……!? いちろ、イってる、からぁっ……!」
「うんっ……イってる時にしたら、もっと気持ちいいでしょっ……?」
「ぁ、そんなっ、イってるのに、ぁ、もっとくる、ひぅぁっ、あ! ぁうんっ!ひぁっ、ぅあっ、あぁっ!」
絶頂を迎えている身体を尚も責め立てられて、脳がスパークする。
──きもちいい、きもちいい、だめ、おかしくなる、これ、もうもどれなくなるっ……!
とっくに限界は超えているのに、更に快楽を与えられて、あまりのそれに身体が壊れてしまいそうになる。
「いちろ、ぁんっ、あ、あンっ! んぅっ、ぁ────! あッひぁっ、あ、ぅぁっ!」
「っ、ずっとイってる……かわいいっ……たまんない、朝陽っ……」
最早朝陽は自分が人の形を保っているのかわからない。一郎から与えられる快楽によって、身体が融けてしまっている感覚がする。とけて、一郎とひとつになって、どろどろになっていく。
「あ、ぅぁっ、イく、イってるのに、またっ……! しんじゃう、こわい、いちろぉっ……!」
気持ちがよすぎて死んでしまいそうだ。恐怖を覚えて、朝陽は一郎に縋りつく。その快楽を与えているのは、目の前の男だというのに。
「大丈夫だよっ……死なないから、朝陽、イってっ……? 俺もイくからっ……」
「ぁぅっ、あッ、あンっ! ぁッんっ、あぅあっうあ、は、ぁっひ、ぁっぁ、あッん! ぅぁっ、あっン、んぁっ! あ、イっ……! あ、あ─────────────!」
「っ、は……!」
瞬間、目の前に星が瞬いた。身体が大きくがくんっ! と跳ね、何度も痙攣する。自分がどこに存在しているのかわからない。全てが快楽に支配され、何も考えられなかった。ただ絶頂を感じるだけになって、何もわからない。きもちがいい、きもちがいい、きもちがいい。避妊具越しに欲望を注がれていることにも気づかず、朝陽は未知の感覚に堕とされていた。
「ひぁ、ぁ、あっ…………」
「朝陽っ……あさひ、大丈夫っ……?」
一郎の呼びかけに応えることもできない。一分経っても三分経っても、絶頂は引いてくれなかった。朝陽は涙をぼろぼろと零しながら、ずっと一郎の背中に爪を突き立てる。
「っ、ぁ、は……はっ……は……し、んで、ない……?」
どれだけの時間が経ったのか、ようやく人の言葉を発せる程度に考えがまとまってきた。流し続ける涙を、一郎の指が拭った。
「朝陽、大丈夫?」
「だいじょうぶ、じゃ、ないけど……だいじょうぶ、だ……はあっ……」
快楽を逃しながらゆっくりと息をすると、段々と理性が戻ってくる。
「気持ちよくて怖いの、初めてだった……」
「うん、すっごい気持ちよさそうだった。朝陽、可愛かったよ」
ちゅ、ちゅ、と口づけが頬に降ってくる。そこで、朝陽は気づいた。
一郎の左手が、ベッドについていることに。
「っ、一郎お前っ! 手、手ついてるっ! 傷開くだろ!?」
「え? ……あ、しまったつい。でも大丈夫だよ。少しくらい──」
そう言って一郎が左の手のひらを見る。そして、顔を青くしてばたりと朝陽の上に倒れ込んできた。
「ふぁ……」
「ぐぇっ! 一郎!?」
重たい身体が落ちてきてカエルを潰したような叫びを出してしまった。朝陽が手のひらを見ると、包帯にしっかりと赤が染み込んでいた。
「ごめん、傷開いた……俺血見るのダメかも……クラクラする……」
「っ、馬鹿! 替えの包帯取ってくるから……! ああもう、重っ……!」
脱力している一郎の下で朝陽はどうにか抜け出せないかと身体を動かす。さっきまでの甘やかな雰囲気はどこかへ行ってしまった。
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