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第87話 二人きり?
キヨくんに母さんが家に居るのかと聞かれて、僕はビクリと肩を震わせた。キヨくんと約束した時は、両親が在宅予定だったけれど、急に親戚の法事が入って今夜は居ないんだ。
でもそんな事、キヨくんに言ってはいけない気がして、言えなかった。だって、まるで僕がキヨくんを誘っているみたいだから。僕は思わず言葉に詰まって黙り込んでしまった。するとキヨくんが僕の手をもう一度引っ張って尋ねた。
「玲?…どうした?」
僕は嘘をつくのが下手なので、慌ててキヨくんから離れようと視線を逸らしてベッドから降りようとした。するとどうやったのか、キヨくんが僕をベッドにひっくり返して押さえ込まれてしまった。
「何か隠してる?」
僕は真っ直ぐ僕を見つめるキヨくんの視線に耐えられずに、降参して呟いた。
「実は急に父さんの従兄弟が亡くなって、二人で地方に急遽お葬式に行ってる…。だから今夜は僕一人でお留守番になっちゃって。でも!別にキヨくんの邪魔したくないから、言わないつもりだったんだよ?」
するとキヨくんは急にギラついた眼差しで見つめると、僕に触れるキスをして起き上がった。僕は何だかホッとした様な、ガッカリした様な、何とも言えない気持ちになってキヨくんの後ろ姿を寝転がったまま見つめていた。
キヨくんは携帯を手に取ると、電話を掛けていた。
「ああ、俺。今夜、玲の家で勉強することにしたから。ああ、法事で居ないから。…そう。明日は午後からだから、昼前には戻る。じゃ、そういうことで。はい。」
僕はびっくりして起き上がった。え?キヨくん泊まってくの!?僕が目を見開いていると、キヨくんが振り返って僕にもう一度優しくキスして言った。
「モノじゃないクリスマスプレゼント、くれるんだろう?」
それからキヨくんと一緒に簡単な夜食を食べた。洗面所の鏡の前でキヨくんの歯ブラシを用意してると、キヨくんが後ろから抱き寄せて鏡越しに話しかけてきた。
「玲はお風呂入った?」
僕はまだこれからだと、チラッと目を合わせて答えた。キヨくんが僕の耳たぶを噛んで囁いた。
「俺が玲の後ろ綺麗にしたい。…させて?」
僕は何て答えていいのか分からなかったけれど、一方で自分でも上手くできる気がしなかったから僕はコクンと頷いた。ああ、鏡の中僕、顔が真っ赤だ!そして、そんな僕を見つめるキヨくんの顔は、見たこともない甘い表情を浮かべていた。
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