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第5話
今日のメニューは餃子。
先週に引き続き中華料理だ。
今回は市販の皮を使い
様々な包み方を学ぶことが目標である。
遥希を含め、マダム達も家で餃子を作ることはあるが
基本の包み方以外は試す機会が無かった為、ぜひ練習してみたいと
以前アカリ先生へリクエストしていたのだ。
初めに、スライドショーで包み方の参考動画を見たり
解説を聞いたりした後
各グループに分かれて作業を行う。
「はーい!それでは皆さん始めちゃいましょう〜」
アカリ先生の掛け声をきっかけに
まずはタネとなる材料を用意するところからスタートする。
「えーっと、せっかくだから及川さんがネギ刻んでみましょうか?」
「分かりました。やってみます」
「じゃあ遥希くんにお任せしちゃって、あたし達は味付けの準備しておくわね🎵」
「はい、お願いします!」
役割分担を決め、調理が始まった。だがーーー
ザク、ザク、ザク、ザク
ゆっくりと包丁を下ろす及川さん。
どこからどう見ても大きい輪切りにしかなっていない。
もしかして、野菜を刻んだこともなかったのか…
一瞬頭を抱えそうになったが、ここは料理教室だ。
初心者が来るのは当然だし、やる気を削ぐようなことを言ってしまったら意味がない。
どうにか上手くフォローしなくては。
チラッとアカリ先生に目をやるが、
別グループに指導中で手が離せない様子。
どうしよう。とりあえずまずは長所から褒めるとして…
「及川さん、猫の手がお上手ですね!」
「そうですか、ありがとうございます。」
「あはは……」
誇らしげにお礼を言われて会話が止まってしまう。
本当はアカリ先生から教えて欲しいけど、
早くしないとメインの餃子包みに移れない。
「アカリ先生が今は手が離せないみたいなので、俺から軽く説明してみてもいいですか?」
「ありがたいです。ぜひお願いします」
いきなり先輩風を吹かすようで申し訳ない気持ちだが、すんなり受け入れてくれてホッとする。
「今の切り方もすごく良いんですが、餃子のタネにするにはちょっと大きいんです。肉としっかり混ざるように、もう少し細かく切ってみましょう」
「はい」
「まずは適当な大きさに分けてから、こうやって縦に細かく切れ目を入れて…。そしたら次は向きを横に変えて、左手で押さえながら切っていくと…一気にみじん切りになるんです」
「なるほど。すごく綺麗ですね」
「ありがとうございます!じゃあ、同じ感じて切ってみましょう。早くなくて大丈夫ですので、少しずつゆっくりで」
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
先ほどよりもリズミカルな音が聞こえてくる。
初心者ではあるが、一度教えただけで包丁の扱いが格段に上手くなった。
先ほどのぎこちなさが嘘のように、丁寧な動きで刻んでいく。
3分もしないうちに、全て刻むことが出来た。
「すごい!一回見せただけなのに綺麗にできましたね」
「お手本が良かったおかげです、ありがとうございます」
相変わらず眼差しは鋭いが、
口元には笑顔を浮かべている。
少しは楽しんでくれているのかな。
「あら、もう準備できたのね」
「すご〜い!これ全部亮磨くんが切ったの?」
「初めに遥希さんがお手本を見せてくれたので、それを真似しただけです。」
「遥希くんは手先は器用だし説明も上手よね〜感心しちゃう🎵」
「もう!皆してやめてくださいよ!」
いつの間にか、グループ全員から揶揄われてアタフタしながらも
タネの下ごしらえをし、餃子包みの工程へ進んだ。
帽子型や手裏剣型、薔薇型など
あまり慣れていない包み方に四苦八苦しながらも
バリエーション豊富な餃子がたくさん仕上がっていく。
皮が破れないよう、気を配りながら作業しているとーーー
「遥希さん、いつもどんな包み方をしているんですか?」
ふと及川さんが質問を投げかけてきた。
「えーと、ほんと普通のやつで…。ザ・餃子!って感じの、ひだがたくさんある包み方ですね」
「そうなんですか。もしよければ、その包み方も習いたいです」
そうだ。言われてみれば確かに、
初心者こそ、基本の包み方を知るべきである。
「俺で良ければ全然!」
「ありがとうございます」
そうして、基本の包み方も一緒に練習した後は
いよいよ焼き上げの工程に入る。
フライパンを2つ使って一気に焼き始める。
パチパチと弾ける音を響かせばがら、徐々にきつね色の焼き目が付き、香ばしい匂いが辺りに漂う。
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